KeiRalph

ゴジラ-1.0のKeiRalphのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.8
これまで意識的に山崎貴作品を避けてきたので、過去作と比較してどうこう言える立場ではありませんが、人並みにゴジラ映画含めて数多ある怪獣映画は踏まえているつもりなので、その視点から本作を評価すると、稀代の傑作である「ゴジラ」(1954)を70年ぶりに作り直したらこうなった、という感想です。

何度か、原点回帰として先祖返り的ゴジラはありましたが、結局どうしたって元祖に叶わないのは、後発シリーズにおいては、ひたすら何らかの新たな解釈を加えていくしかないリブートだからです。今回はそのリブートを部分的ではなく全面的に施した事で、原点には敵わずとも、どこを切り取ってもそれなりに面白いゴジラ映画に仕立て上げているのが、心得ているというか、小賢しいというか…

また、CGI技術のめくるめく進化により、戦後の瓦礫の街並みや、現物として再現不可能な戦艦や駆逐艦を再現できる時代になった事も、今回の作品の成功に大きく関与しています。何より、シン・ゴジラの成功や、成功したかどうかは微妙ですが、ギャレゴシなどのハリウッドゴジラなどで、「特撮」を駆使せずとも怪獣映画としてのクオリティは担保できる事を証明した(あの庵野がやるんならケチのつけようがない)事も、山崎監督のVFX演出を許せる土壌が整っていた事も功を奏したのではないかと。

なので、ゴジラ二度目の登場での機雷を使った駆逐作戦などは、凄まじい迫力で正直鳥肌が立ちました。銀座襲撃は…あまりにも元祖を意識しすぎててそっちばかり気になってしまいました。

更にめんどくさい事をいいますが、今回の放射火炎の演出、これまた「シン」がああだから…というのを意識しすぎかな、という気もしないでもないですが、一撃の衝撃は、より原爆というイメージを直結させるもので、説得力を持たざるを得ませんでした。

という訳で、おそらく監督本人もそれなりの思い入れをふんだんに盛り込んだゴジラ部分はともかく、ドラマパートについては、なんとも言えぬ付け焼き刃感を感じました。キャストも配役も素晴らしく、特に主演の神木君については、こないだまでの植物好きな叔父さんから一転して、かなりシリアスなPTSD演技も冴えていました。(復員省やちゃぶ台で頭討ちつけて頼み込む演技、私は神木くんのアドリブと踏んでます。)

それにしても、あらゆる場面で偶然が重なりまくる浩一と典子、シーンの切り替わりでやたら多用される浩一の失神、極めつきは、やっぱ、そうなりますよね、と言わざるを得ない伏線回収!前述の通り、山崎貴作品は未見なので、想像のみの見解ですが、おそらく、もうアカン!と思わせるけど結局何とかなる系の作品が多い人なんだろうな。

前半やたら政府の隠蔽体質に言及する割に、後半にきても結局責任負わせっぱなしで、それこそシン・ゴジラばりの逃げるヘリごと抹殺シーンなどもなく、なんかモヤモヤする。

ところで、あのラストシーンでの敬礼、どういう意味なのかちょっと私には良くわかりませんでした。人間のエゴで犠牲になったゴジラへの敬意?ひょっとして、平成ガメラのオマージュ?
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