Toro

ゴジラ-1.0のToroのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.6
戦争はまだ終わっていない。

その始まりと終わりにゴジラという象徴が体現しているさまざまなメタファーを感じ取りながらも、骨太な人間ドラマをメインに据えた力作だった。こんなにエモーショナルな作品だとは全く想像できなかった。

特攻から逃げた敷島はその先でゴジラと出逢う。その恐怖と対峙し続けていく。

ゴジラ70周年の作品。シン・ゴジラはアメリカとの対比のなかで敗戦国である日本がゴジラに立ち向かう話だと解釈しているが、今作は敗戦国の国民である日本人が戦争を終わらせる話であったと思う。

根底にあるのはシン・ゴジラ以上にエンターテイメント性を排した上で作られる戦争の物語であり、家族の物語であり、願いの物語だ。決して。怪獣だけの話ではない。

敗戦直後の凄惨な状況とそこで生きなければならない人々の決して綺麗事だけでは済まない現実と向き合いながら、歪ながらもまた家族を作り新たな希望を見つけた矢先に再び現れる絶望。

こういう人たちがいたから、今の日本があり、今の当たり前の幸せを享受できていることを心の底から感謝する機会をもらえた。

いつ何が起こるかわからないという時限爆弾を抱えながらそれでも人は生きるためにもがき努力をするものなのだと。

戦後の日本を舞台にした意味を自分なりに深く噛み締めることができる時間を過ごせた。
何度泣きそうになったことか。。

時代と世界から離れタイムスリップができる映画館で観てこそ得られる感慨は確かにある。

国産ゴジラは、だから良いんだ。
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