てっぺい

ゴジラ-1.0のてっぺいのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.0
【-1.0秒まで体感する映画】
“体感するゴジラ”をテーマとした本作は、轟音とど迫力映像でまさにゴジラを体感、終始鳥肌が立ちっぱなし。エンドロールの最後まで施された演出で、劇場の明転-1.0秒までぎっしり映画が楽しめる。

◆トリビア
〇敷島を演じた神木隆之介は、「いままでに経験したことのないような役柄で、本当に苦しかった。どれくらい自分を追い込み、(役柄を)掘り下げたらいいのか。連日、何かに追いかけられるような夢を見ました」と役作りの苦悩を語った。(https://eiga.com/news/20230904/13/)
〇浜辺美波は、所属する東宝芸能の先輩女優たちが演じた“ゴジラ・ヒロイン”に格別の思い。焼け野原の戦後日本を単身で強く生きる役どころに「生きてこそと唱えながら、最後まで駆け抜けたいと思った」。象徴的なセリフである「あれがゴジラ」については、「たったひと言ですが、緊張しました。いろんなパターンで、何度も撮り直ししていただいた」と明かす。(https://eiga.com/news/20230904/13/)
○ 『-1.0』というタイトルの意図について、山崎監督は「戦後でゼロの状態になった日本がゴジラによって悲惨な状況に陥る中で人々がどう立ち上がるのか」「初代ゴジラよりも以前の時代設定」「助走」「ここからどう生きていくかと一度身を引く」「何かを失う」といった例を挙げ、「いろんな意味を感じていただければ」と説明している。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ゴジラ-1.0)
〇山崎監督は『ALWAYS続・三丁目の夕日』の冒頭にゴジラを登場させ、西武園ゆうえんちのアトラクション「ゴジラ・ザ・ライド」で映像監督を務めた、ゴジラとは縁が深い人物。(https://www.moviecollection.jp/news/212411/)
〇近年では100メートル級のゴジラがスタンダード化する中、本作はあえて小さめの身長50.1メートルに設計。「小さい方が生々しさや現実感があって怖い。50メートルくらいだと見上げた時に目が合う感覚もあるし、ゴジラと人間を一緒に撮ることもできる」と、その狙いを監督が明かした。(https://article.auone.jp/detail/1/5/9/202_9_r_20231102_1698876041694742)
○ ゴジラの正面プロポーションは三角形が良いと考え、脚にはがっしりと筋肉をつけたという監督。背びれは、体内の再生エネルギーが暴走して突き出たかのような、凶暴でトゲトゲしい形にしたと語る。(https://www.gqjapan.jp/article/20231103-godzilla-minus-one-movie-takashi-yamazaki/amp)
手のひらの向きは過去作では下向きで、『シン・ゴジラ』はで“God”だから上向き、本作では獣と神の中間だから横を向いている。(https://amp.natalie.mu/eiga/news/547809)
〇主演・神木隆之介、ヒロイン・浜辺美波という組み合わせは、NHK連続テレビ小説『らんまん』と同一だが、オファーも撮影も本作のほうが先だったという。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ゴジラ-1.0)
〇シリーズ前作「シン・ゴジラ」にはそのモノクロ版「シン・ゴジラ オルソ」が製作されており、企画者の庵野秀明は、「『ゴジラ-1.0』もモノクロ版を作ったほうがいい。二重に儲かるし、昭和が舞台だから“シンクロ率”も高い」と山崎監督に提言している。(https://eiga.com/news/20231027/29/)
〇山崎監督曰く、プロモーション来日を果たしたギャレス・エドワーズ監督(「GODZILLA ゴジラ」「ザ・クリエイター 創造者」)が、本作を鑑賞後、「ひれ伏してくれた」そう笑。ただ、予算が1億ドルくらいかと聞かれ、実際はそれをはるかに下回ることについては、苦笑いだった。(https://eiga.com/news/20231027/29/)
〇本作は邦画で初めて「ScreenX」(270度の視界がスクリーンで覆われる)で上映される。ゴジラから逃げるシーンでは群衆の恐怖と混乱が、ゴジラが都市を破壊するシーンではその強さが伝わってくるような没入感が味わえる。(https://www.cinemacafe.net/article/2023/10/16/87989.html)
○監督がラージフォーマット上映の魅力を説明。IMAXは巨大スクリーンで実寸大のゴジラを、Dolby Cinemaでは暗い闇から巨大なゴジラが現れる画のダイナミックさを、4Dはゴジラが迫ってくるときの地響きや振動を楽しめるという。(https://natalie.mu/eiga/pp/godzilla-movie2023)
〇これまでの作品で培ったVFX技術を本作に注ぎ込んだという山崎監督。「『アルキメデスの大戦』の海や航跡の表現を進化させて取り入れたり、ゴジラが建物を破壊したときの数十万個の破片といった繊細な部分も作り込んで、今まで80点だったことが100点になった感覚がある」と語る。(https://natalie.mu/eiga/column/545398)
〇本作のゴジラの鳴き声は初代のものを使用。現代の音響システムで鳴らしきることを第一に試行錯誤し、ZOZOマリンスタジアムで実際に音を鳴らして反響を収録した素材を映画に使うという大規模な録音にチャレンジした。(https://www.phileweb.com/news/d-av/202310/31/59219.html)
○ 本作の公開日11月3日は「ゴジラの日」。シリーズの第1作目が1954年の同日に公開されたことを由来として、東宝が制定した。(https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/1970502/amp/)
○ トライスターピクチャーズが製作したハリウッド版ゴジラ『GODZILLA』('98)は、原作とはまったく異なる造形やアレンジだったため、その賛否が分かれた。東宝の取締役曰く、そのため2014年以降の製作を担当しているレジェンダリー・ピクチャーズとは、東宝が監修できるよう契約し、日本のゴジラのイメージやコンセプトを尊重しながら製作してもらっているという。(https://www.gqjapan.jp/article/20231102-gq-hype-godzilla-minus-one-movie)
○ 2016年の『シン・ゴジラ』以降、本作まで間が空いたのは、東宝とレジェンダリー・ピクチャーズとの間で「レジェンダリー製作のゴジラ映画と同じ年に東宝製作のゴジラ映画を公開しない」という契約を結んでいることが背景にある。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ゴジラ-1.0)
○ 2018年に東宝の取締役が「マーベル・シネマティック・ユニバース」形式の「ゴジラ・ユニバース」製作の可能性について言及した。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ゴジラ-1.0)
〇ハリウッド製ゴジラとキングコングのクロスオーバー『モンスターバース』シリーズの実写ドラマ版『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』が11月17日よりアップル TV+にてドラマシリーズ配信される。24年には映画『ゴジラvsコング』(21年)の続編が公開予定。(https://www.moviecollection.jp/news/212411/)
〇全国の公衆浴場(銭湯)とのコラボが実現。一部銭湯にて、限定の暖簾やポスターを掲載するとともに、オリジナル商品である「手ぬぐい」「下足札キーホルダー」を販売する。(https://godzilla-movie2023.toho.co.jp/news/mv8elwbrb/)

◆概要
「ゴジラ」生誕70周年記念作品で、日本で製作された実写のゴジラ映画としては通算30作目。
【脚本・監督】
「STAND BY ME ドラえもん」シリーズ 山崎貴
【出演】
神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、 佐々木蔵之介
【公開】2023年11月3日
【上映時間】125分

◆ストーリー
タイトルの「−1.0」の読みは「マイナスワン」。舞台は戦後の日本。戦争によって焦土と化し、なにもかもを失い文字通り「無(ゼロ)」になったこの国に、追い打ちをかけるように突如ゴジラが出現する。ゴジラはその圧倒的な力で日本を「負(マイナス)」へと叩き落とす。戦争を生き延びた名もなき人々は、ゴジラに対して生きて抗う術を探っていく。


◆以下ネタバレ


◆人間ドラマ
敷島が島へ向かうシーンから始まる冒頭。敷島は特攻隊から逃げた人間であり、その弱さゆえ、島で更なる犠牲を出す、人生の負い目を彼が背負う事がここに記されていた。“自分の戦争は終わっていない”という彼の言葉の通り、生き続ける自分への自問自答を劇中ずっと続けていく。明子や典子との家族の契りからも逃げ続ける彼は、典子の死によって心を失い、ゴジラの駆逐に向かう事で自我を取り戻し始め、生きる事を決めていく。そうして“生きて抗った”事で成功を収め、自分の中の戦争を終わらせた敷島。政治の視点から描かれた「シン・ゴジラ」('16)とは一味違い、本作はそんな敷島の人間ドラマという一本軸で紡がれており、見やすく構成されていたと思う。

◆体感するゴジラ
島で兵士たちを次々ぶん投げ踏み潰すゴジラは、戦艦に乗り上がって強襲し、電車も軽々と食いちぎり振り落とす。電車がビルにぶち当たり、その元の方向に向くとゴジラがヌッと現れるあのシーンのゾッとする事。思わぬ方向から飛んでくる尻尾も意表をついてくる。天に向かって吐く咆哮に、熱線で船や街を破壊するのも迫力満点。いびつな背びれが、まるで逆ドミノのように次々と突起しエネルギーがたまっていくのも鳥肌モノ。近年の100メートル級のゴジラと違い、あえて50メートル程にして、その脅威を真近に感じられるよう、“体感するゴジラ”を目指したという本作。過去作のどのゴジラよりも、また最近のどのモンスター映画よりもその轟音とど迫力映像に鳥肌が立ちっぱなしだった。

◆ラスト
帰還した敷島の元に届けられた電報。生きていた典子の元に泣き崩れた敷島でハッピーエンドと思いきや、典子の首筋には不穏な模様が。監督が影響を受けたという「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」('01)のラストとほぼ同じだった、水中のゴジラの破片にその復活を予見させる、そんな終焉と少しでも変化をつけたのか。はたまた次回作への伏線か。色んな監督でゴジラを描いていくという東宝の方針を鑑みれば、本作単体で監督が仕掛けた、その後の議論を呼ぶギミックだと考えるのが妥当かもしれない。物語が頭を巡りながら迎えるエンドロールには、ゴジラのテーマが流れた後、近寄ってくるゴジラの足音と、その咆哮の轟音。ZOZOマリンスタジアムでわざわざ咆哮の反響音を収録したというその鳴き声を、ロールのラストに持ってくる演出もニクければ、それこそ“体感するゴジラ”を最後の最後まで味わえる、ゴジラ愛がぎっしり詰まった満足の一本でした。

◆関連作品
○「ゴジラ」('54)
シリーズ第1作。本作はこの作品のリメイクである事が明言されている。Hulu配信中。プライムビデオレンタル可。
○「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」('01)
本作の脚本も担当した山﨑監督がこの作品から影響を受けた事を明かしている。Hulu配信中。プライムビデオレンタル可。

◆評価(2023年11月3日現在)
Filmarks:★×4.0
Yahoo!検索:★×4.3
映画.com:★×3.9

引用元
https://eiga.com/amp/movie/98309/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ゴジラ-1.0
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