かりっと焼いた林檎と柑橘系果物

ゴジラ-1.0のかりっと焼いた林檎と柑橘系果物のネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

久々の日本産実写ゴジラ作品。



太平洋戦争の最中、特攻を命じられるも恐怖のあまり機体が故障したと偽って大戸島の修理部隊に逃れた主人公。
そこで突如出現した巨大生物に襲われ、部隊はほぼ全滅し辛くも生還した主人公は心に深刻なダメージを受けてしまい日本へ帰還するも実家も両親も失い絶望的な状況下でふと出会った連れ子を抱えた女性と同棲する事になり日本も主人公も徐々に復興していく中、再び巨大生物が現れ日本を襲うというお話。

時代設定が太平洋戦争時から戦後間もない時期という事もあり歴史的政治的な小ネタが多く史実に合わせた世界観の構成は見事。戦後日本にもしもゴジラがあらわれたら…というIfの世界を1人の特攻兵士の視点から描いています。

軍隊色が色濃く、重巡洋艦高雄や駆逐艦響に雪風、局地戦闘機震電等ミリタリー好きな方は目頭が熱くなること請け合いです。私はゴジラと震電との闘いで涙が出ました。

またゴジラが非常に恐ろしく、人間を次々と塵の様に踏み潰し蹂躙していく様はまさに怪獣という風格がありゾッとさせられます。
CGのクオリティーも素晴らしく、目の前にゴジラが居るという雰囲気が画面からこれでもかと伝わってくる迫力がありました。

ゴジラ自身もこれまでのイメージにあった
無敵の怪獣王ゴジラではなく、謎の巨大生物かつ海の怪物という描写に昭和ゴジラの原点回帰を見ました。
超再生能力も持ちつつ、内部からの攻撃には弱いという怪獣らしさと生物らしさのバランスが絶妙で新鮮さも感じさせます。

歴代ゴジラ作品の様な超兵器が無い中でいかにしてゴジラを倒すのかが気になっていましたが、まさかの水圧を利用する作戦という意表を突いた描写がツッコミどころもありつつ、理にかなってる方法だとも思います。(これまでのゴジラが強靭過ぎた為とも思います。)

主人公を演じる神木隆之介さんの満身創痍な様子は非常に生々しく戦争のおぞましさやPTSDの苦しさを見事に表現されています。

ややオーバーでありがちなクサい演出も見られますがここは人の好みの問題だと思います。
人間パートが中心ですが間延びしたりダレる事なくテンポ良くスムーズに進み、中盤や後半から登場する人物たちが魅力的で飽きさせない構成になっていると感じます。

ラストシーンではかなり意味深なカットが写り続編の可能性が非常に高いですが、是非ともシリーズ化して欲しいと願わずにはいられません。

ストーリーは良くも悪くも王道でシンプルなものですが多くの人が楽しめる戦争やミリタリー、昭和の時代やゴジラに興味関心を持ってもらうきっかけとしても映像作品としても素晴らしい完成度の高い作品だったと思います。