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ゴジラ-1.0のcinemakinoriのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.7



“あなたの戦争は終わりましたか?”





観に行った映画館が横浜みなとみらいのイオンシネマだったのだが、観終えて車に乗り込み7階の駐車場から出る矢先に飛び込んでくる横浜の港風景。
いや、ガチで青い海が不気味で仕方がなかったよ。
あの東京湾からゴジラ出てくるんじゃね?しか思えないくらい映画に没頭できた作品だったんだと実感。
そして地上に降り、施設(ワールドポーターズ)から出た後に平和なベイブリッジや観覧車やインターコンチ、ランドマークタワーや日本丸等のいつもの風景に漸く安堵する。





つまり結論から言うと相当面白い!




初代ゴジラから受け継がれるメタファー、そして新たなプロットとして、戦後復興を舞台にした上でのカタルシス、そして何より【シン・ゴジラ】では描かれていなかった主人公に纏わるヒューマンドラマ。
そこへ現代の映像技術を駆使した圧倒的映像とゴジラの造形美。
ある意味、ハリウッドに打ち負かされてきた邦画におけるジャンル映画の目指していたラインの一つの到達点であり、パイオニアとなり得そうな意味深く遺産的な作品かも知れない。
様々な物理的制限の中でもがき苦しんで来たこの分野の邦画も、今後は最先端技術を操る知識と技量さえあればここまで出来るんだと言う道標を、山崎貴監督は建ててくれた気がする。

コアでマニアでヲタなファン層に向けてぶっ放す能力に関して言えば、庵野監督の【シン】シリーズや【エヴァ】然り、世界的人気のその他日本アニメ作品群然り、元々日本のお家芸と言えるのかも知れない。

反面、より万人へ、より興味関心のなかった層へ向けての訴求力はハリウッドを筆頭に、韓流やボリウッドにさえもどうしても一歩も二歩も及ばすの印象があった為、個人的に、邦画に求めるものは身近な人間ドラマに比重が傾くのがこれまでだった。



そんな思いが前提としてありながらも、前評判含め、どうしても気になって気になって仕方がなかった【ゴジラ−1.0】
こりゃ本当に劇場で観て良かった。

もうオープニングからわざわざ映画館へ観に来て良かったと思える零戦の飛行及び着陸シーン。

流石は山崎貴監督!
この辺はもうお得意分野だぜ〜と言わんばかりの細かな演出とリアリティ溢れる映像。
戦時及び戦後の激動の日本を描くのがとても上手な監督さんだなぁと。


同監督作品を観ていれば分かる通り、万人受けを意識したセリフによる説明や、良い意味での臭いセリフ回しは本作も健在。
これが苦手な人も居るとは思うが、今作に関してはそれらが全然気にならないんですわ。
個人的にかなり苦手な吉岡秀隆の演技に関しても、初めて「いいじゃん!」って思えた程。

セリフに頼りがちな山崎貴作品の中で、【Destiny鎌倉物語】でも同じくセリフに頼らず圧倒的な表現力で特異な存在感を醸し出していたのが、私の三大推し女優さんのうちの一人、安藤さくら様。
【ゴジラ−1.0】でもその演技力に圧倒されました。
他キャストはとにかく説明じみたセリフのオンパレードの中、安藤さくらに至ってはとことん無駄なセリフは省かれ、その表情や全身を使った抜群の演技力で、シーンの状況説明や感情説明を見事に表現している。
本当に凄い女優さんと思える上、安藤さくらが出てくると妙に映画の作品自体に安心感や期待感が持てるようになるから不思議。



さて
本題のゴジラに話を振り戻そう。


大前提として、【ゴジラ−1.0】はちゃんと“ゴジラ”が怖い、恐ろしい、そしてえげつない程の無双感であること。
山崎監督のゴジラ作品へのリスペクトとガチ感がひしひしと伝わって来る。

【シン・ゴジラ】での石原さとみ的スタンスの息抜きやブレスすら演出として描かない本気度がヤバい。
最初から最後までとにかく王道路線且つ本来の圧倒的破壊神ゴジラが堪能できる。



それなのに

それなのにですよ!

何ですかこのヒューマンドラマやカタルシスは。

泣けちゃうのよマジで。

【ラストサムライ】のトムクルーズと小雪のシーケンスを思い起こさせるあの感じと言えばわかります?

アレなんですよこのゴジラ映画は。


無謀さの中のヒューマニズム
悲劇を乗り越える人間の生きる力
サイエンスフィクションでは括れないパラレルワールドの現実感。

モンスター映画とヒューマンドラマの融合を日本人が作るとこうなる!というお手本のような作品。



因みに、
ゴジラと言えばあの口から放たれる放射熱線が最高のアビリティだが、
ハリウッド版の天へ向けて放たれるアレも相当格好良かったけども、
個人的に本作の熱線の演出が過去イチ格好良かったなぁ。




【シン•ゴジラ】の日本政府への皮肉や社会的メタファー
【ゴジラ−1.0】のゼロへ向けて生きる事へのメッセージ

どちらもその良さがあり、比較するものではないとは言いつつ、良くも悪くも、庵野ゴジラ派 vs 山崎ゴジラ派 論議が繰り広げられるんだろうなぁ、、、
それがまた映画の良さであり、更なるより良いカルチャー発信の起爆剤になるのだろう。
いい意味で対極化した二作品、そして良い意味で両監督の世界線が違うのが日本人として誇らしい。
















クライマックスで流れるあの名テーマ曲が流れた一連の演出
マジで鳥肌立ちました。
そしてエンドロールの【足音】だけで〆るアレ、大好きです。
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