kanaMURATANI

ゴジラ-1.0のkanaMURATANIのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

初代+昭和飛び飛び+平成、令和作品完走済み。
今回は山崎貴監督だから人間ドラマに比重があるのだろうな…とは思いつつ、ゴジラ観たさに鑑賞。
最初にゴジラが出てそこでやられてしまう人というのは過去のゴジラではそこまでの存在なんだけど、今回はその人たちにも人生がある、というのを生き残った敷島(神木隆之介)の人生を通してこれでもかと突きつけてくる。
これはこれでありだが、そういう人の心を描き切るにはいかんせん尺が足りない。突貫工事のように寄り添いあって生まれた家族像が、本当にかけがえのないものなんだと思わせる尺がね…余白を想像することは容易だけど、もっと見せたほうがよかったかなとは思う。あと5分でも…
逆に友人というか機雷撤去チームの3人はすごくいい関係性が滲んでた。佐々木蔵之介の演じる秋津がいい。ザ江戸っ子。(思い返せば「敷島」に対しての「秋津」は明らかに日本の明るいの面のオマージュみたいな性格だったな…でも明るさい台詞の底には敗戦を招いたものへの怒りが通底しているように看取。)

肝心のゴジラ、造形はいい感じ!戦艦巻き込み、電車パクリ、尻尾や足の威力感もよき。個人的に水面の下を滑るように進むゴジラの背中が好きなんだけどこれも流石のうつくしさ。あと機雷撤去チームの木造船を追いかけてた時の水面移動のお顔めちゃ可愛かった。
ただ、このゴジラを水圧と減圧でやっつけようとした割には全然浮上時に体ぐちゃぐちゃになってなくて(庵野さんほどのことはやらないとは思ってたけど)、深海魚があれだけ口から内臓出してるんやからゴジラももう少しくらいグッチャグチャじゃないと割に合わない気がする。海中で一時停止したとしてもよ。

ゴジラ映画を世に生み出すとき、それはもう葬る手段も共に考えだされる状態になって久しいと思うんだけど、庵野さんがゴリゴリに政府サイドによる撃退を描いたことに対してか、めちゃくちゃ民間の組織であることが強調されていた。戦時下政府と違い人命を軽視しない、人の死なない作戦をと明言するのは斬新で良かった。
しかしあれだけの放射能を浴びて登場人物たちのほとんどはこの後長くは生きられないし、最後の典子(浜辺美波)の首筋に蠢く黒い痣?が映し出されたの、G細胞系の何かを予感させて不穏。−1.0のタイトルの重さは最後まで通貫している。いつ失われるとも知れぬ薄氷の上に立つような幸福だとしても、生きて抗うことを是とするのか、と思うとハードがすぎる。

あとはゴジラに関する部分じゃないけどまじでどうしても許せんのがひとつだけ…これだけ戦後日本にこだわって細部を再現しておきながら、アップで映る新しい位牌の戒名が印刷されてるのはいただけないー!そこは手書きっしょ…びっくりした。そして典子超人すぎ。どこでそんな鍛えてきたの…生き抜く力があるのは冒頭から描写されてたけど、それだけではすまん凄さがあった。

なにはともあれ、ゴジラ生誕70年。ゴジラほど重く苦しい業を背負った怪獣は世界のどこにもいない。あなたは銀幕の中でこれからも私たちの愚かさを嘲笑い、翻弄し、そしてまた海に〝鎮〟められてくれるのでしょうね。
※2023.11.10加筆
kanaMURATANI

kanaMURATANI