よねっきー

ゴジラ-1.0のよねっきーのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.2
こういうハリウッド的な気概を持った大衆映画が日本から出てきたことは素直に祝福したいし、ゴジラが登場する場面は全体を通して結構楽しんだ。しかしドラマパートに関しては、演出・撮り方・演技が揃いも揃ってあまりにもベタ。映画をある程度観てきたフォロワーの皆さんからすると、このベタさはちょっとノイズなんじゃないかと思われる。まあエンタメ作品として十分楽しめるとは思うけど、批評的な視点での鑑賞には耐えかねると言わざるを得ない。

タイトルの「マイナスワン」ってのはつまり、「日本が大きな痛手を負って〈ゼロ〉になった戦後すぐのタイミングで、さらにゴジラが来て状況が〈マイナス〉まで叩き落とされたらどうなっちゃうのか」っていう、一言で言えば「泣きっ面にゴジラ」ってコンセプトなわけですよね。
そのコンセプトを踏まえると、ゴジラが来る直前に「慎ましくも幸せな生活の風景」みたいなシーンを入れる意味がわからない。そこまでの映画の流れにも逆らってるし。「もう壊される物も失われる物もない世界から更に奪っていく」という方向にしなきゃ〈マイナス〉というコンセプトに合わないし、そもそも映画としての意外性に欠けるんじゃないか。ゴジラが来ますよ、というわざとらしい前振りになっちゃってるし。

大袈裟な演技はまあ、ハリウッド映画にもままあることだとして無視できる。ただ、上記のような「ここの演出はそれであってんのか?」というシーンがちょっと多い。脚本が悪いわけじゃないと思うんだけど、演出が映画を予測可能なモノにしてしまってる。

だからおれは『シン・ゴジラ』が好きなんだなあ、という再確認にもなった。元気よく動く恐竜よりも、コンセプチュアルで予測不可能な巨大生物の方がおれは恐ろしい。
ただ、元気よく動く恐竜が登場する映画は、最近の日本にはあまりなかったと思う。その一点でやっぱおれは、この映画を肯定したいのだ。
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