岡田秀親

ゴジラ-1.0の岡田秀親のネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2023/11/22

TOHOシネマズなんばで9時40分の回から山崎貴監督『ゴジラ−1.0』を観た。
水曜日のサービスデーだったので1300円。

※ネタバレありで、感想を書いていきます。

始まって間もなく大戸島にゴジラが出てきて暴れまくり、無惨にも人を殺していく。
人間に対して容赦のないゴジラは、観たかったゴジラだ。
描写される登場人物が限定されているので、殺される人に過度な感情移入が起きないのが良い。

ゴジラは海からやって来て陸に上がる。
次は海での遭遇だが、このゴジラは背びれが大きく造形されているので、海を進んでいる時には背びれが目立って禍々しさを感じさせる。

そして陸に上がって銀座を襲う。
ここでも、戦後の復興から再建しつつある建物を破壊していく。
熱線を吐くときに背びれが隆起していくのは高揚感がある。

米ソの対立があって、米軍が軍事行動を控えたいから、民間で対処するしかないというくだりは、まあ考えられないこともないかと思ってスルーできた。

作戦としては、フロンガスで包んで深海に沈めて圧力で押しつぶす、失敗したら浮上させて急減圧で殺すという2段階で、戦後の民間でできるアイデアとしては考えられそうなものだと思った。

結局はどちらも失敗に終わって、主人公の自己犠牲で解決するのだが、これは一歩間違えば最低な映画になるところだった。

主人公は特攻隊の生き残りで、特攻から逃げて生きたという負い目があった。
だから、ゴジラに対しては爆薬を積んだ飛行機で口の中に突っ込むという特攻をしかけるのだが、これで死んでしまえば、特攻を美化することになってしまう。

太平洋戦争の戦中の戦闘機には脱出装置がなかったというくだりが伏線になって、これで特攻して死んだら最低な映画になると不安になりながら観た。
結局は、整備士の計らいで脱出装置が付けられていて、特攻はするが助かるという結末になって良かった。

銀座でゴジラが暴れたときに、主人公の大切な女性は吹き飛ばされて死んだと思われていたのだが、厄災の混乱で安否が不明だっただけで、実は大怪我を負っているが生きているという大団円は、まあ、そんなラストでも許容できるなと思った。

確かに、説明的な台詞は多く、わかりやすく確実に意図が伝わるほうにしているところは、観客の鑑賞眼の進化を停滞させるものだとは思うが、大衆性を獲得するためには、もうこれは、こっちの方向性を取らないと商業的に成り立たないのだろうなと渋々納得している自分もいる。

TOHOなんばのSCREEN3の小さな劇場で観たが、破壊音やゴジラの咆哮など、音響的には劇場で観て良かったと思った。
観客は30人くらいか。