YohTabata田幡庸

ゴジラ-1.0のYohTabata田幡庸のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
2.0
「ゴジラ−1」もとい『「ジュラシック・パーク」×「ジョーズ」×「ダンケルク」÷山崎貴-1』
「嫌い」や「つまらない」と言うよりは「どうでも良い」が正しい気がする。どうでも良過ぎて無気力。

山崎貴作品は「Always 三丁目の夕日」シリーズ、「スポーツマン山田」もとい「Space Battle Ship Yamato」、「寄生獣」シリーズ、「ルパン三世 THE FIRST」を観て来た。「Always〜」は小さい頃に観た為、普通に楽しんだ記憶がある。今思い出すと何だそれなくだりが多いが。「スポーツマン山田」は幼いながらにつまらなかった記憶がある。「寄生獣」はそのエグさも含めて楽しんだ。「ルパン三世」どこをどうとったらこんなに酷い物が作れるのだろうか、と首がねじ切れる程ひねったのを覚えている。

「ゴジラ」シリーズは正直殆ど通って来ていない。だが54年の初代はマイ・ベスト・フィルムだ。何度も見返している。その特撮の技術、物語、ゴジラの恐ろしさやメタファー、ディテール含めてこれ以上のゴジラはないと思っている。初代は戦争、原水爆等の人類がもたらした人類の手に負えない物と、人間の愚かさの象徴として、第二次対戦から復興した東京を蹂躙して行った。その意志のない恐ろしさ、人間の無力さに魅せられた。ゴジラの話を聞いた、お洒落な格好をした女性たちが「また疎開なんて嫌よ」と話しているシーンが戦後復興を果たした東京を見事に表している。

そして後追いで2016年庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」を観て面食らった。戦争のトラウマを象徴した初代に対し、庵野ゴジラは2011年3月11日のあの地震とその後の福島第一原子力発電所の事故のメタファーと、後手後手に回った日本政府描いた。「シン・ゴジラ」を観て、3.11の恐怖と、翌日の新聞に掲載された写真で観た何とも言えぬ興奮を一気に思い出した。「映画みたい。カッコイイ。けど怖い」それが3.11の時に11歳の私が思った事だった。

前談が長くなったが、さてゴジラ生誕70周年記念作品「ゴジラ −1」。完全に初代を意識したプロットで、特撮ではなく山崎監督十八番のVFXで、ハリウッドを意識した新しい国産ゴジラ。評判も高かったので、一抹の不安も有りながら、ある程度楽しみにはしていた。日本公開から約1ヶ月後にスウェーデンで公開初日にIMAXで鑑賞。客席も中々埋まっていて、盛り上がっていた。上映後に拍手まで起きていた。
だが結論、VFXは良いが、私の好きなゴジラの要素がない。思想が私と根本的に合わない。そこを百歩譲っても、脚本と演出が酷い。の三拍子揃って、途中からどうでも良くなってしまった。話が進むにつれ、どんどんテンションが下がって行った。こんな経験は東出昌大と新田真剣佑の「OVER DRIVE」以来。

先ず、私の好きなゴジラの要素。人類が抗い様もない、人類が産み出した恐怖のメタファー。ここに関しては、主人公・敷島浩一のトラウマ、PTSDのメタファーなので良いのか。だが、そのお陰で意志なき恐怖が歩きまわる、と言う要素はない。セカイ系のモンスター・パニック作品に成り下がっている。

思想に関して。「俺たちの戦争は終わってないから、もう一度戦ってケリつけようぜ」見事に過去から学ばない登場人物たち。
「生きて抗え」「犠牲者を出さない事を誇りにする」「生きなきゃ駄目です」とか言う割に、敷島がずっと特攻しようとしている。他の人たちも戦いたがっている。
そもそも海軍再軍備ってナチスとかで考えたら危険思想過ぎる。
戦闘兵器は使い様で良い物なのだと言う、「そんな訳ないだろう」な綺麗事。その点、宮崎駿は「風立ちぬ」で上手くやっていた。
先の大戦に海軍は乗り気ではなかった、と言う史観。
放射能の恐ろしさがうやむやになっている。
敗戦国、唯一の被爆国と言う、被害者意識。
これらが全て、ゴジラと言う存在の矮小化だ。

脚本。
映画とは「口で語るな、観せろ」だろう。「びしょ濡れだ」「この国の未来はお前らに任せた」見れば分かるから敢えて言わせるな。
当時のが使いそうもないカタカナ語。「メッセージが届くはず」等。
そもそもの日本語の間違い。「偽善者ぶって」→「善人ぶって」等。
敬語とタメ口の混ざり方。
「ゴジラは10日以内に帰って来ます」「今ならゴジラは反撃できません」何故分かる?
「恐れ入谷の鬼子母神だぜ」失笑。
矢鱈喋る割に肝心な事言わないのな。お陰で出来損ないの浪花節も良い所。

演出。
皆、良い役者の筈なのに下手に見えると言うマジック。安藤サクラまで下手に見えるのは、撮り方と演出の問題。
自分の肩を抱いて「うわー」はいくら何でも今やらないだろ、2000年代のビッグバジェット糞映画じゃないんだから。
和やかな空気の中、いきなり「お前それ本気で言ってんのか!?」「そう言うの良いんだよ!」等といきなり怒鳴る。
回想シーンとか、ピンチの時にスローになるとか、ダサいからそう言うの本当に止しにしましょうよ。
「連れて行って下さいよ」って突っ立ったまま言うかね。
木造船ならゴジラ普通に追い付くのでは?
「Always 〜」にも通じる漂白された昭和感。
モブシーンも小学生の学芸会状態で酷い。

何だか終始舐められている感じがした。

良かった所。
飛んで来る電車、ゴジラが修復して行く感じ、爆風、黒い雨、戦艦、戦闘機、国として不能な日本と男として不能な敷島、「あれがゴジラ」、ゴジラへの距離、ゴジラの咆哮、国産ゴジラが続いて行くというメタ的な部分。

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モノクロ版出すってか。
「70周年だし初代に合わせてモノクロ、庵野秀明もやってたし」じゃねーよ。気を衒った事するのも良いが、それで稼ぐのって、アイドルの握手券とか初回限定版CDみたいで姑息と言うか、ダサくないか?

先ず作品その物の質で勝負したらどうなんでしょうか。

作品が不細工なら売り方も不細工。徹底していらっしゃる。流石としか言い様がない。


私の2023年ワースト1位。おめでとう。
心底向っ腹が立つ。大嫌い。
YohTabata田幡庸

YohTabata田幡庸