ニシカワリキ

ゴジラ-1.0のニシカワリキのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

これはごくごく個人的な感性の問題やから勘弁してほしいねんけど、やっぱワシ怪獣そのものゴジラそのものに全く乗れん、ということを再確認した。それがなんらかの表象なのだとして(まあだいたい分かってはいるのだけど)、それを「何か分からないまま自己(ないし所属する集団、国体、などなど)に害を及ぼすので排除する」というシナリオでは、かなり市井の醜悪な部分の似姿にも見えてしまうと思うんだけどなあ。その点で、どうしても「シン・ゴジラ」と比較せざるを得ないのだけど、「ゴジラとはなんであるか」について作中世界観に基づいた生物学的解釈を加えようというアプローチから「科学と政治の相剋」というドラマを描きつつ、それ自体が翻ってゴジラの表象するものを浮かび上がらせていた後者の見事さが改めて思わされる。
あとはこれも好みの問題だろうが、現代邦画の演技は毎度毎度過剰に映る。そんなガチャガチャ動かなくてもいいっしょ、と思うことが多い。セリフもあんまりキマってない。もう少しセリフに味がほしいなあと思うときがチラホラ。言葉遣いもそうなんだが、語彙や発話の特徴がほぼ全編にわたって現代風だったのにアナウンサーだけ当時らしいのは、自分には違和感がある。古い映像などを見ると市民も結構ああいう喋り方だったろうと思うが。当時代性は当時の作品に求めよ、と言われればそれまでではあるものの、黒沢清の「スパイの妻」などはそこの妥協がなかったからなあ、と思い出してしまう。
正直、途中までは2点くらいにするつもりだったんだけど、橘の男泣きとかラストシーンとか、予定調和ではあるけれども確かな救いとなる人間ドラマには素直に泣かされてしまったので、ノットフォーミーな作品中では最高、としておきたい。フィクション、エンタメとしてだけ見るならどうしても、生命を懸けた人たちの姿は胸を打つ。どういう表象であれ、ね。