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ゴジラ-1.0のcamusonのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.3
怪獣パートとドラマパートとに大きく分けたときに、
怪獣パートは、大迫力で文句なく楽しめましたが、
ドラマパートはいまいちノリきれず、
大きく心を揺り動かされるまでには至らなかった・・・
という感想です。

舞台設定を太平洋戦争の終盤から戦後すぐの混乱期にしたことは、
今までのゴジラシリーズにはないユニークな発想で、良い着眼だと思いました。
これにより怪獣パートにおいては、
今まで味わったことのないレトロと怪獣のコラボに浸ることができました。

一方、ドラマパートについては、いくつかの要素が重なって、
不自然さが目立ってしまい、没入できませんでした。

まず、エヴァンゲリオンのシンジ君のようなヘタレ系主人公に、
既視感を覚えて少しうんざりしてしまったというのがあります。
ヒーローに負の十字架を背負わすために、
色々とやっているという狙いが見えてしまい、
主人公が不都合に陥るご都合主義を感じてしましました。

戦後のガレキと化した町は、よく再現しているとは思うものの、
悲惨な生活感があまり伝わってこなくて、
赤ん坊を巡る2人のやり取りも、どこかリアリティが感じられず、
お遊戯的・お花畑的に見えてしまいました。

役者の演技力というよりも、演出方針の問題だと思うのですよね。
特に主人公とヒロイン以外のわき役たちには、
わかりやすいキャラを大げさに演じることが求められていて、
そのわざとらしさに没入感が削がれることが多かったです。

役者に無駄な演技をさせる隙を与えなかった「シン・ゴジラ」の
演出手法は正解だったのだなとの思いを強くしました。
そこまで極端ではないにしても、役者の演技力に頼ることなく、
解像度が高く、流れるように自然なプロットとシナリオをつくり上げるのが正攻法で、
その土台があってこその役者の演技なんだよなと気付かされた次第です。
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