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ゴジラ-1.0のABBAッキオのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.0
 2023年山崎貴監督脚本。東宝ゴジラ70周年記念作品と銘打たれており、シン・ゴジラ以来の東宝ゴジラ。日本でもヒットしているがアメリカでの大ヒットが伝えられる。実際に見るとなるほどと思わせられた。
 オリジナルのゴジラは、戦争、核兵器、技術信仰の傲り、など複雑なモチーフが組み合わされ、伊福部昭の音楽と共にあらゆる点で完璧な映画だと思う。シン・ゴジラが東日本大震災の記憶の中で核技術を人間が制御できるかを改めて問うた、特に日本人へのメッセージ性が強い作品だったのに対して、本作のゴジラは戦争のメタファーだ。そして戦争は今でも日本人にとって重い記憶であると同時に、アメリカを含めた世界にとって今日的なテーマになっている。それは日本にとっても無縁でなく、「新しい戦前」という表現はゴジラ-1.0というタイトルと重なる、明日の世界をも予感させる大災厄だ。
 特に戦争で破壊された東京の風景はウクライナやガザの風景と重なるし、ゴジラの熱線の破壊後に立ちのぼる風塵は原爆後にも見えるが、911のツイン・タワー崩落後にも見える。船の集合場面はダンケルクを、神木の戦闘機シーンはトップガンを思わせるし、自分にはマーヴェリックよりも説得力があった。政府の情報秘匿や命の軽視についても日本的文脈は最小限に抑えているのも意図的だろう。
 主演の神木、浜辺は時代的にはあまりに整いすぎた顔立ちだが演技はさすがに安定感があり、特に神木の後半が素晴らしい。佐々木蔵之介、安藤サクラら助演も文句なし。当時の日本を考えれば米軍の不在や戦争を巡る会話など不自然な点もあるし、核について申し訳程度しか触れられていないストーリーであえてゴジラである意味もないかも知れないが、伊福部音楽を効果的に使いながらそれに頼りすぎない劇伴もよく考えられており、全体として隙のない作りで楽しめた。
 1954年のゴジラはその複雑なモチーフで永遠のナンバーワンだが、本作は平成時代のシン・ゴジラと肩を並べる令和の新ゴジラだ。
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