天馬トビオ

ゴジラ-1.0の天馬トビオのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.0
特撮パートはさすがの80点。銀座上陸後のゴジラの重量感、威圧感、虫けらのごとく人間を踏み潰す残酷性、放射能熱戦発射のカウントダウンよろしく隆起する背びれなど、このあたりは山崎監督の同檀上。

一方、危惧していたとおり、人間パートはチープでうすっぺらなでき。こちらは40点。

平凡な人物設定はいかんともしがたく、『三丁目の夕日』での堤真一のコピーとしか思えない佐々木蔵之介、相も変わらずいい人を演じる(それしかできない?)吉岡くん、ヘタレ役をやらせたら当代一の神木くん……と既視感いっぱいの男性陣。

女性陣もしかり。焼け跡にあって常に汚れ一つない割烹着姿の安藤サクラ、そしてヒロイン浜辺美波の位置づけも曖昧模糊。はすっぱな戦災女性がすぐに良妻賢母になり職業婦人になっていく。生きるのに精いっぱいの戦災女性なら同時公開中の『ほかげ』のリアリティには遠く及ばない。

『シン・ゴジラ』の政府vs.ゴジラという設定の向こうを張り、ゴジラ殲滅兵器に新兵器ではない既存の機器に改良を加えて武器に転用するなど、のちのモノづくり大国日本を予言させるような新機軸、民間vs.ゴジラの斬新な視点を持ってきたのはいいけれど、作戦決行前後が安普請すぎて緊迫感に欠ける。

そして、思わせぶりたっぷりのエンディング。海中に沈むゴジラの細胞は、より凶悪な存在として1954年に再臨するのだろうか。核や放射能への拒否反応を意図したであろうヒロインの首に残る黒あざ。いかにもな、あざとい演出。

というわけで、特撮パート・人物パートの合わせ技を平均して60点。ここには、まさかの震電登場にアドバンテージを付与していることもお忘れなく。
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