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ゴジラ-1.0のえるのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

細かいツッコミどころは腐るほどあるが、まあ見ごたえはあったのか

まずもって大前提として、本作は初代ゴジラのリメイクなんだろうな。ただし、主役がゴジラそのものから、戦争とゴジラに巻き込まれた人間、にシフトしているが。

話の本筋としては、第ニ次大戦で生き残り、いわゆるお国のために死ねなかった軍人達が、自分達が生き残った意味を見出す的な感じなのかな。少なくとも主人公はそうだが、他の人は特にそうでもなさそうだったな。生きていることで未来に希望が残る的なメッセージを感じたが、生かされた命だから何があっても死んじゃダメなんだと主人公に涙ながらに説いたヒロインがあっさり自己犠牲で主人公だけを助けたのはちょっと目が点になった。別に自分が主人公と一緒に助かることもできた場面(主人公を建物の陰に押し込んで熱線の衝撃波から守ったが、余裕で自分も一緒に入れるタイミングだった)で、あんなに生に執着していたヒロインがなんで???僕がサイコパスだからわからないのかな?

なんか戦後復興に際して、共通の敵の打倒という同じ方向をみんなで向けば、強い原動力となる的な話になるのかなとかも途中まで思ってたけど、別にゴジラ抜きで随分復興進んでたみたいだし、ゴジラ打倒作戦も一部民間の有志だけで立案実行されており、肩透かし食らった。『日本はどうやって立ち向かうのかーーーー』みたいな触れ込みだったと思うが、日本、立ち向かってないです。

それから主人公の元に居候を始めたヒロインと、そのヒロインが連れてきたどこの誰の子供かもわからない孤児は何だったのかな?ヒロインが闇市かなんかで窃盗して、逃げてる途中にすれ違いざまに赤ちゃんを主人公に預けて身を眩ませて、主人公が赤ちゃんを放って行ったりしなかったのを見てあんたいい人だね、みたいなやつ。主人公が善人なんて確証どこにも無いし、身売りでもされてたらどうするつもりだったんだろう?勝手に預けといて逆ギレするのか?ヒロインがその赤ちゃんを我が子のように世話する描写があるだけに、どういう思いを持ってるのか理解不能だった。かろうじて戦後日本の命のリレー的な雰囲気は受け取った。

もうこの際、クライマックスの作戦のガバガバさはかわいいもんだとすら思う。不確定要素が多すぎて、逆によく成功したな。

その作戦の最後の最後の見せ場、戦中特攻からも1回目のゴジラ襲来からも逃げて自責の念に駆られていた主人公が、ゴジラの口に爆弾を抱えた戦闘機ごと突っ込んで"特攻"する覚悟を決めたシーン。主人公がゴジラの撃退から逃げたせいで部下を失った飛行機整備士のおっさんは主人公のことをずっと恨んでいたけど、この度守るべきもののために命を懸ける覚悟を決めた主人公を見届けた上で、主人公に特攻直前に爆弾の安全装置レバーを引けと指示するシーンがある。僕は絶対にこのおっさんの計らいで、爆弾安全装置と脱出装置が連動していて、主人公は死ぬつもりで突っ込んで行ったところ、脱出させられておっさんの想いをそこで受け取る熱いシーンが来ると思った。ところが別にそんなことはなく、普通におっさんは脱出の方法まで主人公に教えており、主人公はちゃんとそれを守って自分で脱出しましたとさ、というネタバラシが最後にある。いや、なんか、僕の演出の方が熱くね?笑
まあ素人が偉そうに語るもんでもないのでこれはこれで良いのだろうが。

無事ゴジラ撃破後、実はヒロインは辺りが更地になるぐらいの熱線の衝撃波を食らってもなんか右腕と右目に包帯を巻く程度でピンピンしていたことが判明して主人公はヤケにならずに生きることを選んで良かったねとなるシーンがある。ヒロインの耐久力がバケモノなのはもはや様式美だが、こんなシーンがあるならなおさら、僕の演出で生き残った方が生きてて良かった、軽々しく命を捨てるのは間違いだったって主人公は思い知ると思うのだがどうですか?笑(しつこい)

で、問題のラストワンカット。シン・ゴジラを意識しすぎたがちょっとやりすぎてしまった結果、なんか観終わったあとに視聴者がモヤモヤすることになってしまってないか?シン・ゴジラはなんかちょっと謎が残るようなゾクッとするような示唆で良かったと思うが、本作は、今回は撃退に成功しましたが普通にゴジラは再生してまた襲いに来るのでした、めでたしめでたし、みたいに話を終わらせられたので、いやなんも解決してないじゃん??という気持ちのままエンドロールが流れ始めてしまうという…。続編作りたいんかな?

まあ総合的には悪くもないけど特に良くもなかったなって感想。初代ゴジラがあくまで怪獣特撮映画だとするなら、本作はゴジラをエッセンスとした人間ドラマだろう。
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