金魚鉢

ゴジラ-1.0の金魚鉢のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.8
『VFX技術の進化に息を呑む山崎貴流ゴジラ』

久々に映画館体験できて良かったと思える邦画に出会った。日本でこの規模の映画が、重厚感たっぷりに作られていることに感動した。特撮でできなかった一人称視点の画角をVFXで実現していて、ゴジラに覗き込まれるところ等は迫力満点だった。引きの画も質感がはっきりしていて、たしかにそこに存在している緊迫感が良かった分、海上での出番がほとんどで陸での登場シーンが少なかったのが勿体ない気がした。

画角同様に今作でのゴジラは、戦時中の東京を大混乱の渦に陥れる動く災害のような存在でありながら、かなり個人的主観に基づいた描き方。特攻隊としての務めを果たせず逃げ生き延びてきた敷島が"乗り越えるべき壁"として個人のPTSDを投影させ、一対一の構図がかなり目立つ。生き延びてしまった者たちの戦争を終わらせる闘いとしての怪獣映画で、解釈の余白はほとんどなかったように感じた。その割に、人間周りのドラマが、敷島と典子の関係性含めて少し飲み込みずらさがあってあまり感情移入できず、最後の討伐も予定調和に話が進みあっさりしていたのが残念だった。戦場から帰ってきて身の回りに誰一人生存者がいなくなっている絶望な冒頭に対して、所々戦時中の人間ドラマとしてはかなりぬるい部分もあってバランスも曖昧な感じがした。
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