カレーをたべるしばいぬ

ゴジラ-1.0のカレーをたべるしばいぬのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

物凄く良い所と物凄くイマイチな所が共存している映画。
轟音上映はマジで良かった。足音と咆哮、メインテーマも入れ所がキマッてる。最終盤の長い沈黙もより映えていた。


■物凄く良い所
・VFX
・俳優陣の演技
・ゴジラのアクション
ゴジラはマジで容赦ないし、特に尻尾の迫力が良い。
ビルの壊れ方とか海で追っかけてくるゴジラの表情とか、ハリウッド顔負けのVFXが邦画に現れて面食らう。
熱線の演出もお洒落なシンゴジと違って潔い感じ。

神木隆之介からはあどけなさが消えて、妄執が滲み出るギョロリとした眼光にとても引き込まれる。
吉岡秀隆や佐々木蔵之介もハマり役。

叢雲作戦の参加者を募る会合で「よし!やってやろう!」みたいな決起の演出があり、これは個人的に他の作品でもあまり好きではないシーン。そんな中、主要キャスト陣は既に腹を括って沈黙していたのは良かった。

■物凄くイマイチな所
・度が過ぎるご都合主義
・大衆向けなのかマニア向けなのかよく分からない
・蛇足な演出

無から負(マイナス)へということだが、主要キャストに犠牲者は殆どいない。もしかして-2.0に続く?
全体的にセリフが説明的で長い。確かにすっ飛ばしたカットが多く、説明しないと分かりづらい所もままある。ただそれで間延びが消えている部分があるのも否定できない。銀座にいきなりゴジラ。

展開が読め過ぎる。わざとそうしているのかもしれない。名探偵ピカチュウの正体を最後まで気付かなかった鈍臭さの俺でも分かった。電報とか脱出装置とか。橘の、結局は誰も死んで欲しくないという意思を貫いている点は非常に良かったけど。

陰鬱で直向きな日本の"戦後像"を演者達が補強しているのだが、ゴジラとの戦闘はどこかコミカルでドラマティックに描かれるため、感情がイマイチ定まらなかった。

銀座に勤める典子がゴジラに襲われるシーンはかなりアトラクション的な演出でゲンナリ。まさにゴジラの正面に典子の電車があり、間一髪助かるという展開は、ハラハラというよりも寧ろ冷めた、俯瞰的に見えてしまった。もっと、ゴジラの進路からは少し逸れた所にいるのに、圧倒的な攻撃範囲に無残に殺される。といった方がよりマイナスではないでしょうか。

最終盤、推力不足を補うために民間船が大挙して救援に来るシーンがありますが、これもちょっとクサいというか…。あと、あれだけの数の船のもやいを解いて連結させるためには何分かかるんでしょうか。その間ゴジラは水深800mで待っててくれたのかな。

あ!あとね、犠牲者を出さないことを誇りにしたい!とか宣っておいて、いきなり鳴き声で誘導する部隊全滅してますよっ!


シン・ゴジラ的なリアルっぽさが好きなので、より特撮的、物語色が強い本作の色味はあまり合わなかった。でもVFXはマジで凄い。佐々木蔵之介はカッコいい。