Ginga

ゴジラ-1.0のGingaのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.3
アマプラに登場してしまったのでさすがに見るしかない。
いくらなんでも公開からのスパンが短すぎて、また映画館の寿命がひとつ縮んだ気がする。

不満点は多いが、それを忘れられるくらいに正直面白かった。神木隆之介の顔芸は素晴らしかったし、なんだかんだいってやっぱりハッピーエンドの映画はどれだけ飛躍してても幸せな気分になってしまう。映画はどこまでいってもエンターテインメントであることを今一度思い出させられたような一作だった。

あらゆる批評で挙げられる部分だが、やはりオッペンハイマーとの対比は欠かせない。両作共に1人の人間の内面に焦点を当て、一連の出来事の中での変化、という点が主題になっている。シキシマは大戸島での後悔、ノリコの赦し、ノリコの死に対する後悔、タチバナの赦し、と何度も心境の変化を経験する。そうしたシキシマの変化とは対照的にゴジラは常に一貫して眼前のすべてを破壊し続ける。破壊と赦しの連鎖の中でシキシマは成長し、最終的にはゴジラを打ち砕く。しかし、そうして打ち砕かれたゴジラは深海で再生の連鎖へと再び溶け込んでいく。ゴジラは災害であり、それに向き合う個人に焦点を当てたのはあっぱれ。ゴジラそのものに対する思いは最早やることがなくなりつつあるので、ゴジラ映画の新たな境地を開いたと言える。
戦争の捉え方、という面でも日本人らしく戦争を捉えられていた。敗戦国である日本にとって戦争は「終わらせた」ものではない。戦後を必死に生き抜く姿を捉えがちだが、自分の中で戦争を終わらせることの出来なかった人は数多く存在しただろう。今作がアカデミー賞で大きく評価された理由のひとつに、オッペンハイマーが原爆の被害や実際の状況を描くことを嫌った一方で、そうした点に焦点を当てたことがあると思う。良い映画であり、タイミングも良かった。運も実力のうちである。
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