rage30

ゴジラ-1.0のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ゴジラシリーズ、最新作。

まずは、ゴジラのデザインについて。
最初に登場した時は、サイズも小さいし、首も大きいしで不安だったのですが、成長?してからは、いつもの和式ゴジラという感じで良かったです。
顔と首もシュッとしてて、刺々しい背ビレもカッコ良い。
ただ、背ビレが段階的に光るギミックだったり、地上での移動モーションがちょっとロボットぽく見えるのは残念だったかな。

まぁ、アカデミー賞を取っただけあって、CGのクオリティーに関しては、誰が見ても文句のないところでしょう。
日本の特撮映画でも、ハリウッドと遜色のないレベルの作品が作れる事を証明した功績は認めざるを得ません。

一方、物語的には、特攻から生き残った主人公の再生が描かれます。
「生き残るのが大事」と反戦的なメッセージを訴えるのは良いのですが、戦争で負った心の傷を戦争的な行為によって乗り越える…というのは、あまりにショック療法過ぎて、賛同しかねるところ。
あれじゃ、むしろトラウマを悪化させたり、戦場への依存を深めるだけで、本当の意味で彼らのケアにはならないと思うんですけどね。

あとは、終盤の脚本がとにかく酷かった。
ゴジラを水圧で倒す海神作戦は興味深かったし、軍事力ではなく、科学の力で戦うのも反戦的で良かったと思うんですよ。
でも、主人公が戦闘機で特攻する事が示唆される事で、最後は主人公が特攻するんだろうな…と予想が着くし、そうなると海神作戦が失敗する事も予想出来てしまう。
案の定、海神作戦は失敗するわけですが、水島らの漁船が都合良く集結するのも不自然で、「彼らはこういう状況になる事を見越していたのか?」と疑問を抱かずにはいられませんでした。

私が思うに、山崎貴監督の作家性とは、最新鋭のCG技術と泣ける人情話を両立するところにあると思っていて、そういう意味では、彼の作家性が全開に発揮された作品と言えるでしょう。
ただ、問題なのは、CG技術はアップデートされていくのに対し、人情話の方がアップデートされていないという事。

よく日本映画を腐す台詞として、「説明台詞や泣き叫びが多い」と指摘されますが、本作を見ると、こういう映画の事を言うのだなと痛感させられました。
登場人物を魅力的に描いて、少しずつ感情移入させるのではなく、大仰な感情表現を用いて、観客の心情を半ば強引に引き寄せる。
普段から映画を見慣れていない人は、その方が分かり易いのかもしれませんが、映画を見慣れている人にとっては、鬱陶しいし、鼻白んでしまうわけですよね。

また、政治的な問題には踏み込まなかったり、旧態依然としたジェンダー観など、悪い意味での思想性のなさ、問題意識の低さも気になるところ。
本作を見てると、遠景(ロングショット)の少なさが気になったのですが、本作に限らず、山崎作品は総じて遠景が少ないんだとか。
それはつまり、自分が知ってて理解出来る範囲でしか映画を撮れない、山崎監督の限界を象徴している様にも思えます。

ちょっと山崎監督への批判が多くなってしまいましたが、それでも彼の作品がヒットしているのは事実なわけで。
私が挙げた短所も、年に1~2回しか映画を見ない人にとっては丁度良いのかもしれません。
正直、山崎作品は食わず嫌いな部分もあったのですが、今回がっつりと向き合う事で、山崎作品のダメな部分も、ヒットする理由も分かってスッキリはしました。
繰り返しになるけど、映像に関しては凄いので、山崎作品を食わず嫌いしている人も今回だけは解禁して、ゴジラの大暴れを楽しんで欲しいし、ダメな部分はダメな部分として分析して、今後の映画を見る際の参考にして欲しいなと思います。
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