すだれ

ゴジラ-1.0のすだれのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.8
ゴジラは水爆実験の際人間によって現れてきたもの、人災、つまり戦争である。作中人々はゴジラと全くコミュニケーションが取れない。無慈悲に街を壊していき、人々の悲痛の声は全く届かない。これはやはり戦争だ。そこに元海軍兵の主人公らが中心となってゴジラを撃墜しようとする。まさにこれは第二次大戦のやり直しである。だから彼ら彼女らがどのようにこのゴジラ危機をどう生き、どう振る舞うかが重要となってくる。お国は冷戦を言い訳に国民に全く関与せず、ゴジラの情報を規制するなど完全に二次大戦の二の舞である。そこで主人公らは民間の力を合わせて戦おうとするのだが、これは今も私たちの身に巻き起こるコロナや能登半島地震でも主になってしまっている自助共助でここに公助の力は一切登場してこない。
そして主人公らは1人の死者も出さないという標榜を掲げてゴジラに立ち向かうが、ここで指摘しておかなければならないのは主人公は特攻の生き残りということを人生最大の恥と思っており、その重荷を背負っているということだ。他の元海軍兵や学者もそうである。自分たちが立ち向かわなければ国は救われない、自分は救われないというヒロイズムは神風率いる日本軍が反省しなければならないものではななかったか。最終的には誰1人死者を出さずに結果オーライという締め括りであるが、命の危険を差し出さないと救われないという戦争の呪縛をもっと描けなければいけなかったのではないか、そして彼らが救われるのはゴジラを撃墜することへ己を投げ出すことであってよかったのか。
エンターテインメントとして面白いのは確かでありつつも手放しに怪獣モノとせず、このような過去の戦争に対する態度も必要であると想像の余地を与えるゴジラという存在を私たちは考えなければならない。
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