カツマ

ゴジラ-1.0のカツマのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.6
悪夢が終わらない。地は揺れ、波は荒れ、その巨躯が全ての日常を破壊する。それは怪物。災厄となって降りかかったその刹那、怪物はゴジラという名で絶望の象徴として立ち塞がった。彼は立ち向かうことができるのか、そのあまりにも大きな不幸と破壊の産物に。死ぬための闘いではなく、未来を紡ぐ、そのために。

今年度の日本アカデミー賞を席巻したこの新たなゴジラは、アメリカ本国のアカデミー賞でも視覚効果賞を受賞するなど、国内外で高い評価を獲得。北米の邦楽実写映画の歴代興行収入記録を乗り換えるなど、興行面でも大きな成功を手にしている。これまでにも山崎貴監督は最先端のVFXを駆使して様々な作品を手掛けてきたが、その集大成と呼ぶべきクオリティを達成しており、今後のゴジラ映画の大定番として長く愛されていくことだろう。

〜あらすじ〜

第二次大戦終結間際の1945年。特攻隊として出撃した敷島浩一は、機体に故障箇所があることを偽ってある島の臨時飛行場に不時着していた。だが、その夜、ゴジラと呼ばれる怪獣が島に現れ、敷島と整備兵の橘を除く全ての人間の命を奪い去っていった。その際、敷島はゴジラに発砲することもできず、逃げ出し昏倒。橘はそんな敷島を罵倒し、彼に死んだ仲間たちが所持していた写真を投げつけたのであった。
本土に戻った敷島を待っていたのは、家族の死と焼け野原となった東京の街だった。たった独りになった敷島は、同じく戦災で独りきりとなった女性、典子と彼女が拾った孤児の赤ん坊、明子と出会う。典子や明子と奇妙な共同生活が始まった敷島は、そこに家族にも似た温もりを感じ始めるも、ゴジラと戦争の悪夢が彼を苦しみ続けていて・・。

〜見どころと感想〜

まずは舞台を戦後に設定したことが効いている。国としての軍事作戦が不可能な時期に、民間の力だけでゴジラという脅威にどう立ち向かうのか、という絶望感は半端じゃない。だが、それが戦後の立ち上がっていく人たちの姿に重なり、ドラマチックかつ大仰な演出ともマッチしている。また、ゴジラは元々メッセージ性の強い作品だが、その志しもしっかりと維持されており、人類にとっての災厄を暗示させるシーンも多かった。

神木隆之介、浜辺美波といった売れっ子を軸に添え、脇を固める布陣は安藤サクラ、吉岡秀隆といった過去に日本アカデミー賞で最優秀賞を受賞するほどの名優たちを配置。特に安藤サクラは今作の演技で最優秀助演女優賞を受賞するなど、出演すればどんなポジションでもインパクトを残せることを証明するようであった。他にも佐々木蔵之介、山田裕貴など、主演クラスを配置しつつ、それぞれに見せ場を作るバランスの良い脚本が展開されている。

VFXはさすがは山崎貴。特にゴジラを取り巻く波の表現などはかなりリアルで、迫力満点のゴジラ登場シーンは没入感たっぷり。しかも、これが大作ハリウッド映画に比べたら遥かに低コスパで収まっているという点も驚きである。脚本も非常にシンプルで分かりやすい。その分、結末は読みやすいが、それでも感動させてくるパワフルな作品に仕上がっている。気付いたらクライマックスで見事に泣き腫らすことになってしまったのでした。

〜あとがき〜

何としても劇場で観たかった本作ですが、上の子の育児と奥さんが下の子を妊娠していたのもあって劇場で観るのは断念。それでもこうして早めに配信が来てくれたのは有り難かったです。

山崎貴に関してはドラゴンクエストで殺意を覚えたくらいには嫌いになってましたが、今作では素晴らしい作家精神を見せてくれましたね。『シン・ゴジラ』に続く、日本版ゴジラの大定番でしょう。いや、シンプルにとても面白い映画でした。劇場で観れずとも、映画観たなぁという感慨が残るのはいいものですね。
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