森澤のしっぽ

ゴジラ-1.0の森澤のしっぽのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
5.0
ゴジラ、圧倒的に怖くない。

あーれー?
敗戦直後のゼロ状態の日本に、巨大生物が表れて日本に追い打ちをかけてマイナスに突き落とすって話だと思っていたのですが、そいうお話ではありません。
いや、そうなのかな? 目指したのはそこなのかな?
もちろん物語は戦中戦後の日本の悲壮感みたいなもののなかで、さらに巨大生物に襲来されるという絶望的な状況なんだけど……そんなことよりゴジラがカッコよすぎて頭に入ってこない。
と、いうか絶望感とか皆無。
だって、主人公とその周りの人間しか、人間らしい人間が登場しないんだもん。
この人たちというのが、心をぐちゃぐちゃにヘシ折られてそこから立ち上がるというメンタルじゃないのよ。
絶望に打ちひしがれた中からやっと見出した光…とか
それでも必死でやっつけようとする姿…とか
そんなんじゃなくて、「(根拠のない自信で)みんなのためにやっつけちゃおう! おー!」的な人たちを見せられてもね。

いっそ全員ゴジラに薙ぎ払われてくれたら絶望した。

ゴジラ使ってまで、人間模様(や俳優)を見せようとしなくてよかったんじゃないかと思います。
比べるものではないのですが、”なんだかわからないモノ”に相対したときの人間の様子や、”なんだかわからないモノ”そのもののなんだかわからなさに感じる怖さという意味では「シン・ゴジラ」って秀逸だったんだなぁと再確認しました。

一方で、本作のゴジラはもうただただゴジラ!
ひたすらカッコイイ!
挙動のひとつひとつ、画面全体の明暗の使い方・見せ方、カッコよくあることにこだわった造形、それにみあった展開。
これはこれで現代で作ったゴジラを感じさせてくれて素晴らしいと思う。

続編も望まないし何度も見たくなる作品ではないんだけど、頭の中でゴジラのカッコイイ姿を反芻して楽しめる良作でした。
ごちそうさま。