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ソフト/クワイエットのSQURのレビュー・感想・評価

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
3.0
レイシストの現状をなるべくリアルに映画にしたはずなのに何故か逆にリアリティが損なわれてしまう、といった問題が発生している。別に差別主義者を単に"悪"として批判しているわけでもなくしっかりと背景となる社会的弱者の側面も描いているのだけれど、どうにもあざとく思えてしまう。
最初の自己紹介のくだりで「リベラル」を批判しながら自己擁護の理論に「リベラル」な理論を援用しているところだけちょっと良かったかもしれない。
レイシストが自滅していく様子は観ていて楽しいが、ストーリーは胸糞の悪いものなので笑っている場合ではない。

胸糞ストーリーの割にカメラの端々に映る自然の描写、カエルや鈴虫の鳴き声、夜の草むらや水面は美しく、清涼でひとひらの癒しを与えてくれる。
ワンカットのテーマ上の意義は分からなかったが、90分のあいだに、午後から日暮れ、夜になっていくという明確にマジックリアリズムな時間の流れがワンカットで自然の美麗さを添えて映されている部分には映画的な喜びがあったように思う。




……映画後半はもはやソフトさもクワイエットさもなかったが、中盤あたりの「白人だけの学校を作って英才教育しよう!」の流れはあまりにもおぞましく恐怖を覚えた。タイトルにもなってることを考えると逆説的にこの部分の恐ろしさを伝えたいという意図があったのかもしれない。そうであったならばそれはとても成功している。
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