なべ

ソフト/クワイエットのなべのレビュー・感想・評価

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
2.5
 常々、長回し、ワンカットにこだわる映画に良作なしと言い続けてるが、またそれが証明されたようだ。カットを割った方がずっとおぞましさが際立ったのに。アングルを変えた方がより恐怖が増したのに。ここ、被害者の表情が追えないのは残念だなあとか、いま撮るのはこいつじゃなくて…と何度思ったことか。カメラの導線の制限があるのだろうが、観客にそんなことを思わせてるようじゃ本末転倒。その時点でワンカット撮影は失敗じゃん。え、ワンカットだったの⁈と言われて初めて気づくくらいでないと。きっと普通に撮ってれば劇伴の違和感もなかったはず。

 さて内容だけど、胸糞と聞いていたが、胸糞レベルはかなり低い。レイシストの思想(思想ってほどの理屈すらない)にぞっとすることもなく、やってる犯罪もヘイトクライムと呼ぶにはあまりに稚拙。これじゃ本気のレイシストたちに失礼。本当に恐ろしいのはレイシストの言ってることにどこか納得してしまう(同調してしまう)自分に気づくことなんだけど、ここに出てくる奴らにはそんなこと1ミリも感じなかった。なので自分の中に潜むそういう悪意を見せつけられることもなく、ただただバカな田舎者の嫉妬や自己憐憫が痛々しく描かれてただけだった。
 アイディアも脚本も特筆すべきことがなくて、「ワンカットで撮ること」だけが目的と成り果てた残念臭がスクリーンから漂ってた。話も演技も演出も何も感じるものがなくて、ほんとずーーーっと無表情で成り行きを眺めてた。
 これといって褒めるところはないのだが(冒頭の清掃員のガラガラが少年の朗読をかき消すところはこれから始まる悪意を仄めかしててよかったかな)、貶すほどでもなくて、うーん、500円だったらアリかもって感じのどうでもいい仕上がり。
 あ、ワンコが酷い目に遭わないってだけでいい点数くれる人がいそうw

 映画とは関係ないんだけど、隣の男がポップコーンを食いながら見てて、ガサゴソガサゴソガサゴソとそれはもう耳障りだったの。何をそんなにまさぐるのか? ガサゴソをBGMにして見る主義なのか? だいたいこの映画をポップコーン食いながら見るセンスはどうかと思うぞ。おまえ、次からはいちご大福とかあんぱんな!
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