教会の2階に集まった白人女性たち。彼らは境遇も年齢もバラバラだったが、「白人至上主義」という一点で集っていた。お開きになった後、数人で立ち寄ったスーパーでアジア人女性2人と口論になった彼女たちは、「あいつらをこらしめてやろう」と思い立ち……。
上映時間92分のうち、不快じゃないシーンはどれくらいあるかなー。1分あるかなー。
それくらい、最初から最後までとことんイヤな気分になる映画だった。ここまでキツいのは珍しい。私にとっては、「ファニーゲーム」や「クライマックス」みたいな作品よりもキツかった。それらはとことん理不尽で残酷で、「不運」でしかない非現実性があるが、本作にはないからだ。この醜悪なキャラクターたちが備えている要素は、私にもあなたにも確実にある。それがとてつもなく不愉快で、苦しいのだ。
彼女たちは、多様性が重視されアファーマティブアクションも普通に行われるようになった昨今、「私たち白人は逆差別を受けている」と主張する。ああー出たよ!逆差別!Twitterでよく見かけるやつだよ!
それまでずっとフェアではなかった状況を無視して、同じスタートだと仮定したら「自分たちが不利益を被っている」と感じるのかもしれない。前の世代が享受できていた待遇を受けられないことを、不公平だと感じるのかもしれない。人種差別はもちろん、男女差別でも障碍者差別でも、LGBTQ差別でも見かける言い草だよね、逆差別。
彼らに権利を与えてやってもいいよ。ただし、私たちの権利を奪わない範囲に限る。
こういう主張は、「公平」とは言わない。社会において公平を実現するためには、当然それまで有利だった方が何かを手放す必要が生じる可能性はある。誰かが一方的に不利益を被る状況ではなく、等しく利益を享受し、等しく不利益を被る状況に変えようとしているわけだから。
この映画を観て、彼女たちの言い分はめちゃくちゃだと思う人だって、昨今のトランスジェンダーに関する議論では同じようなことを言っていたりするのでは?「わきまえろ。私たちの権利を脅かすな」と。
被害者がアジア人なので、私たちはうっかり被差別者の方に自己投影してしまいそうになるが、あなたが日本に暮らしている日本人であるならば、自己投影すべきはマジョリティであり差別者である白人女性だちだろう。人間はいともたやすく彼女ちのように醜悪になれるのだと思い知らされるからこそ、本作は「胸糞」なのだと思う。
ワンショットで撮られているので臨場感もハンパないし、「アメリカン・アニマルズ」よりも酷いアホな決断っぷりにストレスもたまる。力関係が刻一刻と変化していく様子もスリリングで、役者が上手いこともあって目が離せない。
あー、それにしても酷い展開が続きすぎてもう……体調が悪いときは避けてね。手ブレもあるし。