Punisher田中

ソフト/クワイエットのPunisher田中のレビュー・感想・評価

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
3.3
幼稚園で先生をしているエミリーは業務後、腕によりをかけたパイを大事に抱えながら意気揚々と教会へ向かっていた。
教会では定期で秘密裏に行われている「アーリア人の統一を目指す娘たち」の会合があり、言うなれば白人至上主義者のための集まりであった....

一時的に湧き上がってくる怒りに対しての接し方を改めて考えさせられる、怒りと向き合うものであり、現代社会の人種問題を風刺したものでもある二面性を持った作品。現実と地続きの問題と空気感を取り入れているからリアルに怖かった。
タイトルの「ソフト/クワイエット」とはよく言ったもので、ティザーやポスターからも察せられるように、今作は自分を律して""ソフト""で""クワイエット""に物事を解決しようとする人達が怒りのクソデカ感情に飲み込まれ、""ハード""で""ノイジー""に物事を進めてしまうのがタイトルの芸術性を引き立てる進行の仕方をしたクライムスリラーに仕上がっている。
2014年に起きたジョージ・フロイドさんの事件を彷彿とさせる内容を盛り込んだ今作、ハッキリ言って映画作品として落とし込むには無理がありすぎるというか、ストレートすぎるというか。

デリケートな題材を扱っているのだから物事をもう少しデリケートな題材なりに考えた内容にして欲しかったのは否めない。
""怒り""との向き合い方を考えさせられる効果はあるものの、考えるとか理性的なアクションをぶっ飛ばすとことん不快な内容に仕上がっている。
また、1ショットで見せているからこそ導入から事に至るまでの過程が滑らかではあるのだが、それが作品の題材に良く作用しているかと云われるとそうでもないように感じた。
ショット自体は工夫もされていてめちゃくちゃスゲェ。
人の真の凶暴性を露わにする作品ではあるがそれのみであって、そこに対しての批判的な部分が画のインパクトのみといった所が解せない。
アンチ人種差別として機能はしにくいし、結局暴力や怒りについて考えてしまうのが難点だと思う。
映画としての面白みはあったものの、冒頭でも書いたように現実と地続きのフィールドでの話だったので不快指数が圧倒的に勝った。
個人的にはあまり支持できない作品。