KOTAYOSHIDA

ソフト/クワイエットのKOTAYOSHIDAのレビュー・感想・評価

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
3.7
これは中々に厳しい。というかここまで直接的な内容を包み隠さず、何のメタファーとしても置き換えず、目の前にドンと置かれることに先ず怯んでしまう。

ポリコレとか昨今の多様性云々とかそういうのの所為で社会から抑圧されていると感じ、その所為で自分の人生が上手くいっていないと感じる女性たちが教会に集まって、最初はよくあるお茶会的に愚痴を言い合うだけだった筈だが、ひょんなことをキッカケにあれよあれよととんでもない暴力の連鎖を生んでしまうという内容。確かに胸糞作品ではあるけど胸糞だな~という感想で突き放せないような切実さがあって、そういう意味で僕はずっとモヤモヤしていました。

勿論差別は許してはいけないという大義名分はあるけれど、自分だって自分の人生の至らなさを何かの所為にしながら日々何とか生き繋いでいる弱い人間だし、同僚と集まれば仕事の愚痴だってめちゃくちゃ言う。それと本作の内容は全然違うだろというのは確かにあるかもしれないけれど、そういう「自分の人生はもっと良いもののはずなのにと日々モヤモヤ生き、仲間と集まれば愚痴を散々垂れる」みたいな自分と同じようなことをして生きている人達が、キッカケ次第ではそういうことをしてしまう可能性があるんだよな、みたいな生々しさみたいなものが自分の背後に迫ってくる感じがして、何とも居心地が悪かった。

白人至上主義グループとかはないけど、自分自身しっかり差別のある国で生まれ育ってつい最近までそれを差別と気付かずに生きてしまっていて、今更しっかり勉強してはいるものの、未だに分かってない事とかも多分あるんだよな。多分未だにナチュラルな差別とか見下しとかしてしまってると思う。例えば自分の人生が今よりもっと悪い方向に行ってしまった時に、人生に対する憎しみみたいなものがこの映画みたいな形で爆発する可能性もあるというか、そういう可能性も捨てきれない人間なんだ俺は、みたいな事を思ってしまうと、とても厳しい。厳しい映画だった。本当に。

全編ワンカット風なのは加害者目線の臨場感があってとても良かったんだけど、車の中のショットとかは明らかにカメラマンがいる前提の不自然な人物配置になってしまっていたので、普通にカメラマン役としてカメラを回す人が登場人物に居た方が良かったんじゃないでしょうか。そうなるとクライマックスであの一連のゴタゴタをしっかり撮影するみたいな部分が成立しなくなる可能性もあるけど。
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