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ロスト・フライトのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ロスト・フライト(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

悪天候の中、落雷でコントロールを失った航空機は奇跡的に島に不時着する。機長のトランスや乗客らは辛くも一命をとりとめたが、不時着した島は凶暴な反政府ゲリラが支配する無法地帯だった。ゲリラたちが迫りくる中、トランス機長は生き残りをかけ、乗客の1人だった移送中の犯罪者ガスパールと手を組む。

一見ありきたりの航空パニック映画か?と見せかけて、本番は助かってからのサバイバル。
非常事態にも関わらず、乗客の安全を守るために機長や会社が真摯に向き合うプロな姿勢に好感が持てるアクションの佳作である。

トランス機長と副操縦士のデレは機体から乗客たちを降ろし、政情不安定なホロ島に上陸したことを説明。
デレに機体の修理と乗客を任せると、トランスは犯罪者のガスパールと共に脱出へ向けて島の探索に出る。
「こうなった責任は自分にある」と危険を顧みず、全員が助かる道を模索して自ら行動する機長。
日本人も共感出来る「最後まで責任を取る」プロ根性である。

ゲリラとの戦闘もあり得るため、修羅場を潜った経験が生きるだろうと、犯罪者にも関わらずガスパールにも協力を求めるのも機長として合理的な判断だ。
例え、彼が逃げたとしても、乗客には被害は及ばない。

非常事態の中、1人で逃げれば良いのに機長に付き合うガスパール。
根っからの悪人ではないのが良い。
道中、外人部隊であったことを明かすガスパール。
彼は戦闘のプロだったのである。
心強いことこの上ない。

まず、救援を呼ぶための通信手段を探す2人。
あるビルに入ると、そこはゲリラのアジトの一つで、旅行者を誘拐して身代金要求の録画する場所だった。
助かった乗客たちの生命も危ないと悟る2人は、そこで電話回線を繋ぎ、航空会社への連絡に成功。
機を捜索していた会社もようやく本格的に動き出す。

事態を重く見た社は、外部から元軍人の危機管理担当者として腕利きのスカースデイルを招集。
トランスからの報せを受けたスカースデイルは、対策室の反対を押し切り、乗客の救出へ向けて傭兵チームを派遣する。
本来なら現地政府に判断を委ねるのが筋というものだが、ゲリラを恐れてか?軍隊の準備が整うのは24時間後だと言う。
それでは抵抗した何人かは殺され、人命救助が間に合わないと、「何としてでも助ける」と独断で傭兵を派遣するのがカッコいい。

スカースデイルの即決は、彼にも修羅場を掻い潜ったプロを見る思いだ。
一般企業が傭兵を飼っているなんて、あり得ない話だが、「いいぞ、いいぞ」と応援してしまう。
「機長はどんな奴だ?」と会社がスカースデイルに見せたのは酔客を制するためにカッとなって羽交締めで落としてしまうトランスの動画(笑)。
「面白い奴だ…」とニヤリとするスカースデイル。
軍人上がりの経歴を持つトランスなら、きっと乗客を守れるかもしれないと期待を抱かせる。

対するゲリラはジェラルド・バトラーと比べると強そうではないが、容赦がない。
残された乗客を発見するや、いきなり発砲して泣き叫ぶ者の首を切り落とす。
ゲリラは皆、比較的若く、さほど威厳も感じられないのだが、それだけアッサリと早死にして世代交代するのか?と思うと少し背筋が寒くなる。

探索中、ゲリラに囚われた乗客救出にアジトに到着したトランスとガスパール。
息の合った連携プレイで次々と見張りを倒すが、囲まれる。
トランスは乗客たちを逃がすための時間稼ぎに、自ら丸腰でゲリラを引きつけた次の瞬間、スカースデイルに命じられた傭兵チームが到着。
激しい撃ち合いの末、トランスとガスパールは乗客救出に成功する。

飛行機に再び乗客たちを乗せると、残った燃料で行けるところまでと行くと、すぐさま離陸の準備をはじめるトランス。
しかし、すぐにゲリラが現れ、再び銃撃戦が。
立ち向かう傭兵チームもまたプロフェッショナル。
狙撃手と突撃部隊の連携が見事。
車を貫くライフル弾に怯んだゲリラを次々に葬って行く。

しかし、多勢に無勢で形勢不利に。
仕方なくトランスは機体から降りて応戦しようとすると、ガスパールが制止する。
助かってもどうせ捕まるなら自分が島に残って単身脱出すると言い、ゲリラの撃退を引き受ける。
ガスパールは無事に飛行機が離陸するのを見届けると、傭兵チームが万が一のために用意しておいた身代金が入ったバッグを手に森へと逃げていく。
一見、火事場泥棒だが、それまでの「危険手当」としておこう。
「達者でな」とトランスと傭兵も阻止せずに見送るのが粋である。
そして、トランスはわずかな燃料で乗客を近隣の飛行場まで運び出すことに成功し、悪夢は終わりを告げるのだった。

流石に奇跡の不時着を二度も繰り返したり、さほど犠牲者を出さずに乗客が助かったりするとは、あまりに都合の良い展開なのが本作の難点。
しかし、なぜだろう?
ゲリラ以外の登場人物の行動には、とても好感が持てる。

強引なアクションが多いジェラルド・バトラー主演だが、本作の機長トランス役は無双の強さではない。
皆が彼の責任感を信頼し、彼を助けるのだ。

見終わった後に思うのは、「個人主義の欧米人の行動とは思えない」ということ。
「不時着したら、無法地帯だった件」という類の話は、見る者に平和な文明社会とは違う「異世界」を感じさせる。
そこで大事なのは「非常事態に際して、皆が協力しなければ乗り越えられない」ということ。
何かトラブルがあれば、デモや暴動や略奪が起こるニュースを良く見るが、そんな欧米人が本作では非常事態において協力を惜しまない。
まるで東日本大震災における日本人の協力体制とモラルがある。
そんなところに共感と好感が持てる作品である。
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