りっく

"Sr." ロバート・ダウニー・シニアの生涯のりっくのレビュー・感想・評価

3.8
まず父子が茶目っ気たっぷりに自分だったらこうする、いい絵と動きだ等々撮り方を指示し、現実の世界をシネマティックに切り取ろうとする冒頭からユーモア満載。彼らは根っからの作り手であり、自らが撮影した映像さえもドキュメンタリーに取り入れることで、全体的にリッチな画が連なるのがいい。

またロバート・ダウニー・シニアの経歴を知れるだけでも本作には価値がある。まるでロジャーコーマン的なインディペンデント魂で、独特のユーモアと斬新な発想、無名俳優の起用など既存の枠組みに囚われないジャンルレスな快作を連発しているフィルモグラフィーは本当に興味深い。

そんな根っからの映画人である父親に息子がカメラを向ける。老いていく父親に質問を投げかけ、撮られ方を最も木にする父親が、最も写してほしくないであろう、パーキンソン病によって震えが止まらなくなった手をフレーム内に収める。その瞬間だけで、多くの言葉を要さずとも、彼らの心情や関係性が読み取れる素晴らしいショットだ。
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