ぜろ

"Sr." ロバート・ダウニー・シニアの生涯のぜろのレビュー・感想・評価

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 私はこの人の演じたチャップリンを高校生の時に観て、その時決めなければいけなかった進路を映画に全振りさせたということがあったんだけど、その頃自分の手の及ぶ範囲で調べて繰り返し繰り返し読んだRDJの最最最初期の経歴が滔々と蘇ってきて、なぜか非常に懐かしい気持ちになりながら観た。

 「初めて出演した映画は父親が監督したPoundという作品で、仔犬の役だった」。一体どういうことなのかずっとわからなかったんだけど、人間が犬を演じるっていう映画だったんだ。10年来の謎が解けた。

 ロバート・ダウニーJrは、『アイアンマン』に出るまでハリウッドのブロックバスター映画に出るような俳優ではなかった。ドラッグ依存症の問題が大きく露出した90年代後半あたりから2000年代はじめぐらいまでのこともあるけど、父親がアングラ映画の製作者で小さい頃からその作品に出ていたような環境だったので、『レス・ザン・ゼロ』ぐらいから本格的に始まったキャリアでもしばらくはメソッド的な演技が求められるような芸術小品への出演が多い。「求められるような」というか、そういうやり方が身に染み付いていて他を知らない、みたいな印象を受ける。ファンの贔屓目かもしれませんが。
 身を削るような感じが薄れてバランスが良くなりだしたのは『キスキス,バンバン』ぐらいからで、監督のシェーン・ブラックとは『アイアンマン3』でもう一度組んで文字通り『アイアンマン』から始まったカムバックを完成させた。MCU初期の作品の中でも役者の個人的な物語(トニーのスーツ依存)を強くリンクさせた珍しい映画だと思う。

 マーベルとの契約が終わって、いちファンとして一息ついて振り返ってみると、まさかMCUがこんな大ごとになるとは思っていなかったというか、RDJは今のハリウッドにいる数少ない「映画スター」的な匂いを持っている俳優になってしまった(なってしまった?)。『ドクター・ドリトル』は何年も前から企画が上がっているニュースを小耳に挟んでいたので楽しみにしていたんだけど、蓋を開けてみると恐ろしいほどのオールスターキャストなのにスクリーンに大写しになるのはRDJただ1人という完膚なきまでのスター映画で、MCU後のこの人の立場を怖いほど実感できる作品だった。こういう映画が作れるのは、あとは『TGM』のトム・クルーズぐらいだと思う。本当に、それぐらいのスケールの俳優になったのだ。
 まあそれはそれとして、トニー・スタークの生死を心配して数年過ごした(2016、2018〜2019年)ファンとしては、ドリトル先生は久しぶりに推しの無事が約束された映画が見られて本当によかったです。

 RDJ関連の企画としてあとニュースを聞いたのは『弁護士ペリー・メイスン』で、これはHBOで実現したようで日の目を見て良かったなと思う。あと、ピノキオの実写化でゼペット役をやる(去年リリースされた二本とはおそらく別物)っていう企画があったと思うんだけどこれはここ数年ニュースがないみたいなので、難しいのかもしれない。
 ひょっとしたらあまりもう表に出る気はないのかなと思わないでもないけど、持ってる牧場のアルパカと一緒に好きなように楽しく暮らしてほしい。
 ノーランの新作には出るようなので、原爆という題材が心配だけど観に行こうと思う。
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