父から息子へ、息子から父へ、世代の間に渡って交差する想いが印象的な作品でした。
そこには血のつながりだけでなく、それぞれ〝ひとりの人〟の心情が描かれていて、伝わることと伝えられないこと、人と想いを通わせる難しさが描かれていました。
もう既に関係性の中に前提があるとしても、やはり「まずひとりの人として向き合う」純粋な心が必要不可欠だと思いました。
普段、父や母とする日常会話は無意識のうちに常に「親子」の前提をベースとしたものとなってしまう節があり、そこに親と子のそれぞれ個人の人間としての想いが通うことは基本ない気がします。
改めて「ひとりの人として向き合う」という純粋な時間が必要になってくること。そしてその会話で肝心なことはこちらの意思を示すことや押し付けることだけではなく「違う価値観の相手を知る」であることだと思いました。
随所に散りばめられていた銚子の街並みも、そこに住む人たちの生活感やケンちゃんの周囲を包む温かさが自然に感じられるカットで、劇中に登場したビック碇先生の素敵な絵柄もさることながら、見どころが沢山でした。
味わい深く、心に尾を引くような作品でした。また観たいです。