コマミー

Sharper:騙す人のコマミーのレビュー・感想・評価

Sharper:騙す人(2023年製作の映画)
3.7
【騙した果て】



"Apple TV+"と"A24"が手を組んで製作したミステリー作品だ。

恐らく全世界共通で、手を染める人が多い"詐欺の世界"を題材とした作品だ。本作に限らず、「オーシャンズ」シリーズや日本だと「コンフィデンスマンJP」などと、比較的詐欺を題材とした作品いわゆる「コン・ムービー」というものは多くつくられたであろう。
このようなコン・ムービーを見た後、しばらくは"人間を信用できない"ような感覚に陥るのだが、「オーシャンズ」シリーズのような娯楽作品だと単純にエンタメとして消費される為、そのあとはケロッとしている事が多いのだが、さすがA24の作品…これは結構作り込まれており、余韻も残る。

物語は書店を営む青年"トム"と大学院生"サンドラ"との出会いのシーンから始まる。
サンドラは"ある事情"を抱えており、トムは愛するサンドラの為にその問題を解決する為に一肌脱ぐ。
しかし、それが大きな非常事態を生む事になり、そしてあの出来事の裏で起きた様々な事に物語はフォーカスが当てられてゆく。

それにしてもキャストが豪華だ。"ジュリアン・ムーア"に"セバスチャン・スタン"、"ジャスティス・スミス"に"ブリアナ・ミドルトン"、そして大御所"ジョン・リスゴー"までいる。ハリウッドのコン・ムービーとなるとこれくらいの豪華さがなくてはいけないとは思うが、ほんとこのキャストを拝むだけでも観る価値はあると思う。
そして、A24の作品ゆえに、難しい捻りも多少加えてくるのだろうなと思い込んでしまったのだが、全然そんな事はなく、結構"サクッと入り込める"。
だがこれは、度数が強い甘いお酒と同じで、あまりにもサクサクっと"騙しの真相"や"騙しの先"が明かされて、「この世にはこんな人ばかりなのか」と厳しい現実を突きつけられて辛くなるかもしれない。疑心暗鬼になるの確実である。

だが、そんな感情を乗り越えて、"ラストの結末"を観た時、結構スッキリした。騙し、騙されるというのはどうゆう事なのか、この"縦横無尽な世界の勝者"は誰なのか分かった時、とてつもない幸福感に浸れた作品だった。

いささか、こんな良質な作品が配信だけでしか観れないのは残念なのだが、定期的に頭を混乱させたい、そしてスッキリもさせたいという変態な方は、本作は絶対ハマるはずだ。
コマミー

コマミー