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水は海に向かって流れるのumisodachiのレビュー・感想・評価

水は海に向かって流れる(2023年製作の映画)
3.8


田島列島による原作は未読。

高校生になった直達は、高校への通学に便利な叔父の家に居候することに。しかし、そこはシェアハウスで会社員のはずの叔父は漫画家になっていた。同居人のひとりである榊さんは美味しい料理をふるまってくれるが、なぜか直達に対して冷たくて陰がある。その理由は運命のいたずらとしかいえないもので……。

淡々としていて地味ながら、どこかファンタジックな不思議な作品。シェアハウスのこだわりが強くて可愛いインテリアのせいなのか、平凡な話のように見えてあり得ない偶然がきっかけとなっているせいなのか、それとも榊さん役の広瀬すずが美しすぎるからなのか……その全部のせいなのかな。

だから、うっかりするとフンワリ平和な映画みたいな気分になっちゃいそうなのだが、ストーリーはかなりヘビーだし、テーマは「怒り」だったりする。ちゃんと怒ること、怒ってもいいんだということを丁寧に丁寧に描いていて、けっこうパンク。どうしようもないダメな大人たちの犠牲になる子どもたちの怒りが主軸となっている。怒りでつながる絆を描いているのも新しくて好き。

鎧のように心を閉ざしているときはブルー、リラックスしていたり心を開いているときは暖色系の服を着ている榊さん。真っ赤な口紅だって、きっと武装のひとつ。これからは溢れるほどの笑顔が増えるといいね。周囲の人々の優しさも沁みた。

最後に。広瀬すずの飛び蹴りは絶品でした。







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