水は海に向かって流れる。そんな疑いようもないただの真実のように、時間は過ぎて行き、最終的にものごとは収まるところへ収まるものだ。けれども、それで全て納得しろというのも難しいことだってある。親の不倫という自分にはどうしようもできないことを、何の感情もなく、はいそうですかと受け入れられるのか。表に出なくとも、もやもやや疑問、不審や反感を抱かずにはいられない。「良い子」であるが故に、「怒る」ことを忘れてしまった人たちの、愚かしくも温かい反抗の物語。
田島列島の原作にある独特のセリフのリズム感を、そのまま実写にしても良さは出ない。そういう意味ではすごくバランスを探しながら頑張っていたようにも思う。「うでたまご」や「ハート泥棒」等、印象的なところは残さざるを得なかったのかなと邪推もする。一方で、原作を読んだ時に感じる人の狡さやどうしようもなさは、話の筋を追うだけでは表現しきれないところでもあった。榊さんはもっとずるくて厄介な人だし、直達くんだってもっとグチャグチャした感情をウチに秘めているはずだ。そのあたりは、案外みんな良い人だなで終わってしまったという印象も受ける。
「榊さん」は広瀬すずがコメントで言うように「クールな人」なのだろうか。原作の印象からするとただ子どもじみた人でありながら誰よりも大人であろうとするというだけではないかと思うし、映画ではクールと言うよりかは最初からずっと怒っている人に見えてしまった部分も多いにある。「怒り」が本作の中心に据えられている以上、そこの扱いはもう少し丁寧にして欲しかったという気持ちがないわけではない。
