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怪物のyuyuのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.8
坂本裕二は「孤独な人のために書いた」と話しているけど、マイノリティのための作品ではなく、当事者性のない人に向けて気づかせる映画に感じた。

トロンボーンのシーンがよかった。秘密を抱える2人が奏でる不協和音が学校に鳴り響く。その不協和音をバックに依里の元へ走り出す湊。「誰にでも手に入るものが幸せ」という坂本裕二らしい言い回しのセリフ。

「出発なのかな?」「出発の音だ」という完璧な掛け合いで迎えるラストシーン。彼らが亡くなったとも捉えられるけど、私はそう思いたくない。あれは、彼らの今後の人生への希望のメタファーであってほしい。問題はなにも解決はしてないから現実は残酷だけど。

人と人の間や人間の心の中に存在している偏見や価値観、自分とは異なる人を排除しようとする心が怪物なのではないか。

すごく面白かった。面白いと感じるからこそ複雑。エンタメとして消費できる側の「当事者性のない人間」だから、どちらかと言えば加害者にあたる人間だから面白いと感じることができるんじゃないか。

坂本裕二脚本が大好きだから、是枝監督がアドバイスしたところや付け加えた箇所を知りたい。

追記
私がこの映画で一番気に入っているところは、湊の辛さを受け入れた唯一の大人である校長先生が善良な人間として描かれなかったところ。人は誰しも悪い側面を持ちながら、誰かの希望になったりする。

https://note.com/mimicanfly/n/n8fd0cd61cf9a
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