イクル

怪物のイクルのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.0
カットと構成が心地よかった。

安藤サクラの演技力はリアルすぎたし、特に学校に行って申し出るシーン。あそこを見た誰もが「自分だったらどうしよう」と親目線で咀嚼することができたのではないか。それを自然に誘導し、また怒り、虚しさ、共感を交えながら体感することができた。以後のシーンで校長には感情がしっかりとあることが確認でき、あのシーンでは安藤サクラ、校長共に互いを人間だとは思わずに会話していることが分かった。

またこの映画は安藤サクラ、瑛太、子供たちの3つの視点から展開されており、あらゆる角度から1つの出来事にアプローチしていたのが面白かった。最後の子供たちのシーンでは子供をメインで描き、母親役の安藤サクラの露出をあえて減らすことで、空想の母親をイメージしながら鑑賞することができた。それは時系列という線を序盤に引いていたからこそ可能であったし、シーンの裏側では母親はどんな感情を抱き、行動しているかという二面性を意識することが楽しかった。

最後の台風は、彼らの未来という名の列車の発信を合図するサインであり、その台風を区切りに星川くんは父親から、麦野くんはクラスメートという世間からの解放を意味し、それぞれの自由を獲得するというオチが私の中ではしっくりきた。
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