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怪物のmsyのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ポスターとか予告編で、浦沢直樹の「モンスター」みたいな話かなって想像してて、公開前のプロモーションでも評論家さんたちが言葉を選んで心を尽くしてこの映画の紹介をされている中「クィア・パルム賞」受賞で一瞬にしてネタバレになってしまった本作。こんなもったいないことある…?もう、そうとして初めから見てしまった…
その上とにかく保利先生が損しかしてなくて、2人を中心として起こった冤罪が重すぎて…本当に自殺しなくて良かった…教員職ハードすぎん…

それにしても、怪物誰だ、が見事にテーマになってた。誤解が本当に誤解で怪物だった。
星川くんがフェミニンなことを叱る父親といじめるクラスメイト達は明確に有罪だが間違ったイメージや場当たりの義憤をみんなが持ち寄って、誰かを窒息に導く。

関係者を舞台に集めて名探偵が謎を解明するとスッキリするけど、そうではなく現実的にいかに誤解を解くかが腕の見せどころ(本当に上から申し訳ありません)、その展開が素晴らしかったです。麦野くんが本質に向き合えずにいるとき、先に気づいた周りのサポート、それはラスボスとさえ思われた校長からの励ましであったり、クラスの女子の「お前の仕事だ」の布のパスであったり、星川くんが作文に込めたメッセージを理解した有能な堀先生であったりするのだけど、一貫して星川くんはずっと星川くんでいて、ブレない彼の姿には心を打たれる。それに彼の振る舞いはとても映画的で華があった。麦野くんのビジュアルも相まって作品のランクを上げてた。2人が生きていないともとれる最後のシーンも映画として美しく機能していた。怪物に負けない怪物にならない人生過ごしたいよね…生まれたからには…と思いながらさめざめ泣いた。あのピアノも素敵すぎてね…

けれど我が子に父親がいない引け目を感じつつ冷静であろうとしている母親が結局後手になってるなどのリアリティがたくさん散りばめられ、怪物は簡単に倒せない怖さも思い知った。
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