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怪物のmadagasのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

観た後に、なんか何度も反芻してしまう。
語られない部分が絶妙で、「この人はなんでこんなことをしたんだろう」という解釈の余地が、あたかも樹形図のように生み出されている。何度も反芻してしまう。

物語の筋としても、映画の構造としても「物事の決定しきれなさ」がテーマなのかなって。なぜ決定しきれないかというと、人間は文字通り生きている世界が違うから。

人間はみんな一つの地球、一つの宇宙で一緒に生きていると思っているけれど、本当はそれぞれのリアル・ワールドを生きているに過ぎなくて、そこは違う世界(あるいは全く違う世界)。
人間誰しもこれまで違う経験をしてきて、それに対して違う感じ方をして、またそれが新たな感じ方を作り上げていく。たから基本、同じ世界にいないのだから、同じ物事に対して決定しきれない。

けれども最後の二人のシーンは、同じ世界に”生きられた”証なのかもしれないと思った。あんなに魂からの歓びに溢れたシーンはあそこだけだったから余計に。
二人が二人で一つの感情を噛みしめ、解放している。

でもそこだけじゃなくて、母ちゃんと先生が台風の中山に入っていくところとか、トロンボーンのところも、部分的に同じ世界にいるような感じがする。リアル・ワールドは、基本的には人の数だけあって、たまに重なったり、また離れたりするのかな。

色々考えてしまうけれど、最後に気になるのは、生まれ変わったのだとしたら、みなとは母ちゃんのところに会いに来るんだろうか。
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