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怪物の史のレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.6
こんなにいい映画なのに!!!なんで公開前にあんなこと言ったんだ!!!!!!!

2023年6月公開の邦画として、完璧過ぎる。現代社会において、幼いクィアを取り巻く環境をちゃんと描いていて。

いーや、でも、トータルするとずっと辛かった……クィア云々より、イジメ当事者とか、親との関係性とかにトラウマがある人は相当覚悟してから観た方がいい。

こう、本編中は、のめり込んでいたからか感情的になっても、割とウルっとくるくらいだったんだけど、エンドロール入った瞬間にブワッと涙出てきて、止まらなくなった。己の思春期とか、クィアと自覚してからの今までとか、現代社会とか、この国の現状とか、例のインタビューとかの「現実」が脳内に浮かんできて、なんかもう、やるせなくて。なんだ、この映画自体がだいぶ現実を感じさせる作りなんだけど、この映画が終わっても、どうやってもこの2人を取り巻く環境は現実にあるわけで。

以下本編内容に触れる感想
構成としては、あの『最後の決闘裁判』と似ていて面白かった。視点変われば、事実が変わる。最後が2人でよかったな……
こう、セイラム魔女裁判的な話かと勘繰ったけど違くて。子ども、特にローティーンって、変なところで素直だし、変なところで偽るし。でも、本人からすればそうせざるを得ない訳で。本作においてそうせざるを得ない状況に追い込んだのは、間違いなく世の中の大人たちで。子どもって変に素直だから大人たちの些細な言葉を間に受けるし、間に受けた故に己を偽るし。狭い世界で、ダイレクトに入ってくる情報なんて、親か先生かテレビかクラスメイトしかなくて。それら全部が子どもたちを追い詰めて。そういうの言った本人も縛られるし。
大人目線も子ども目線も言いたいことが言えない、描写が己の辛さと重なるので辛かった……
親も先生も子どもも、皆んな、人によって見せられる面が変わってくるから印象も変わるよね。

もう一回みたいな、と思わせる構成でずるいな……観たいな……

トンネル抜けた先が虹色で輝いてるといいね……

以下シンプルなキャラ語り
星川くん、いい子過ぎるよ、物分かりいい子ちゃんすぎるよ本当に……けなんでこんな素敵な子が可哀想な目に遭わないといけないんだ……田舎の公立小学校ならまあ、そうなっちゃうけどさぁ……そうならないような社会つくっていこうよ……辛いよ……こんなに素敵なのに……いや、例え素敵じゃなくてもこんな目には遭ってはいけないが。

湊くんもさあ、いい子なんだ、本当に。ただ、もう、これは、男子小学生というコミュニティが悪い。そして、そのコミュニティが悪くなっちゃうのは、テレビだったり、周りの大人の影響なんだよな……オネエキャラなら弄っていいとかさ、ドッキリなら大丈夫とかさ、いじめ庇ったらターゲットが移っちゃうとかさ……BL漫画とか、少年漫画なら、湊くんは周りの目なんか気にせずにヒーローになり切れるんだろうけど、実際の男子小学生ってそんなに強くないし。嘘もついちゃうし。でも、その嘘つかせたのは間違いなく現代社会に蔓延っている偏見のせいだし。

ハグのシーン、ローティーンの思春期には戸惑ったよな、2人とも。己の感情に気付き始める湊くんと、受け止めた上で拒否されてしまった星川くんと、戸惑って拒否してしまった湊くんと……はあ……

なんて言うか、総じて言うと、誰が悪いとかじゃなくて、皆んな悪いよ。大人が等しく悪い。これはもう、そう。現実もそうだし、多分私もそう。
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