ひでG

怪物のひでGのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.4
格というか、レベルが一段階違うなって、思えました。

この映画に関しては、極力、事前に情報を入れずに、ただ、監督・是枝裕和さんと脚本・坂元裕二さんに託して、こちら側も身を任せて鑑賞しました。

「万引き家族」という日本映画史にも残る大傑作の後、フランスと韓国で
撮った是枝さん、

常に映画界、カルチャー全体を考えている
人だから、他国の映画制作に入り、それをまた日本の現場に還元したかったんだろう。

でも、「ベイビーブローカー」を観た後、「日本で十分に時間をかけて撮って欲しい!」と強く思ってました。

そーゆー意味では、送り手も受け手も満を持して迎えた公開。しかも、カンヌ脚本賞のおまけつき。

朝イチの回なのに、結構入っていました!
中に2人のお子さん(主人公と同学年くらい)のご家族が鑑賞していました。
彼らがどんな感想を持ったのかな、心に残るものがあればいいな、(「マリオも楽しいけど、何か分かんないけど凄い!」何て思ってくれたらいな)

さて、情報を殆ど入れずに観たので
一級のサスペンス映画のように、真実を、そして、「怪物」の正体を手探りしているようにスリリングに画面を食い入って、
見ていました。

そして、明かされるあの言葉の意味
「怪物誰だ?」

えっ、えっ、そっか〜、だからか!
待てよ、そっか〜、

驚きと感動、
鳥肌と涙、同時に多くの感情が一気に
立ち上がり、フル回転し始めたあの瞬間

凄いは!凄すぎるるわ!

明確な着地点や決着をはっきりさせぬまま
ラスト直前、重い話、暗い表情のキャストたち、
それらを一気に吹き払うような、
明るい日差しの中、駆け抜ける、突き抜けたような2人の笑顔。

そこに聞こえてくる、全てを許して、
全部閉ざされていても、ひかりは見えるよ、って、そんな何とも言えない優しさに溢れかえるピアノのメロディー、

満を持して、ほんとに満を持して流れる
もうひとりの サカモト

あのメロディが、それまで何を信じて、何を目指していればいいのか、分かんなくなっていた観客(僕)の身体全体に温かいものを一気な流してくれました。

その瞬間、ずっと堪えてきた感情が吹き出してきて、波がとめどなく流れました。(今も書きながら、スマホ画面が滲んでいます😢)

思えば、第1部、安藤さくら編は辛かったな、、あの現場の雰囲気が分かるだけに
安藤さくらのお母さんの気持ちも分かるだけに、、辛かったな、、

第2部、そっか、「羅生門」だったんだっけ。

1部の印象と違う永山瑛太演じる担任の先生。

でも、見せ方が上手い、
こーゆ、多視点型の見せる時、当然繰り返しの描写が増えて、「同じ時間帯に別角度からはこう見えてまーす!」的にポイントの場面をたくさん提示するケースが
多いけど、
この映画、この脚本は、その散りばめ方が実に上手い。まるで、観客に自ら発見させる宝探しみたい。

それに、1部で黒が白、みたいにオセロのように人物像が変わるのではなく、
2部の保利先生にも所々に、
「あれっ?この人やばいかも、、」て思わせる言動を見せていく。

人物も事件も真相も、白黒なんてはっきりつけられてないんだよ。

だけど、だからこそ、ある条件が不幸にも揃ってしまうと、一気に白が黒に変わっていきます。

それぞれに問題は抱えて、でも、優しく、子どもを思っての行動なのに、、

最近、劇場で観た映画のレビューに良く書く言葉、
「2度観ないと分からない、」
でも、なかなか同じ作品をチョイスすることはなかった。

でも、これは観るな、近々2度目を。

その時、何を見つけられるだろうか、
楽しみです。
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