パケ猫パケたん

怪物のパケ猫パケたんのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

👦「怪物、だーれだ」

『怪物』 (2023)
🇯🇵日本  126分

世界の、是枝裕和が日本映画に帰って来た❗

監督 是枝裕和

脚本 坂元裕二
   (オリジナル脚本であり、
   カンヌ国際映画祭脚本賞受賞の
   快挙👏👏パチパチ)

音楽 坂本龍一

ストーリーは、ごく簡単に纏めると、小学校🏫🎒の男子児童に、担任の男性教師と、クラスの生徒から虐めがあったらしい

これを、児童の母親(安藤サクラ)の視線から、学校側に追及して行くのが、第一部

男性教師(永山瑛太)の視線から、故意の虐めはしていないみたいに描かれるのが、第二部

そして、虐められた男子児童(黒川想矢)と、その友だち(柊木陽太)の視線から、もっと大きな全体像が、示されるのが、
第三部である

ひとつの事件を、複数の視点から語られているので、映画としては、黒澤明の『羅生門』(1950)的な構成を採っている


実は、オイラ、二回鑑賞している
その印象は大きく異なったわけだが


⚫一回目 感想

第二部の辺りまでは、集中して注意深く鑑賞していたが、

朝から、『薔薇の名前』(135分)という重厚な、歴史ミステリーを鑑賞した後の
ハシゴだったので、第三部の途中から、
スタミナギレ 睡魔🐱💤💤との戦いでウトウトしながらの鑑賞になってしまった

まぁ、長編の芸術的映画のハシゴは、危険🏃⚠️な体力になっちまったよ、今後、注意しようと思った

さて、その寝惚けアタマでの感想を云わせてもらえれば、トンネルの場面が多いので、タルコフスキーの『ストーカー』(1979)みたいだよっと

話しは進まないし、自ずと眠くなってくる、同じウトウト状態でもタルコフスキーは芸術性が極めて高くて、映像と音の居心地が良い、坂本龍一も敬愛しているそうでもある
だから、タルコフスキーは天才、「怪物」であるのは間違いないのであろうと

是枝裕和の映画でウトウトしても、今回、それほど恍惚感を感じなかったし、映像が特別美しいわけでもない、だから、彼は秀才と、安易なラベリング論を展開してしまった

そして、こんな中途半端な鑑賞は、もちろん、世界の是枝裕和と、フィルマの仲間たちに失礼千番なので、再度の映画館鑑賞を誓ったのであった


フィルマさんたちのレビューをチラ見していると、第三部に当たるところに真価があるようなので、オイラは全く、鑑賞していなかった事となる😹😹😹


⚫二回目 レビュー

なかなかの名作だった

格別に三部目が良い、素晴らしい

パンフレットを帰りに買ったが、
自分の中でレビューらしきものが
完成したので、ほとんど読んでいなくて、今、書いています

まず一部目と二部目について

学校の隠蔽体質には、妙なリアリティがあって恐ろしく、またイライラした

微妙なリアリティの、演出が出来るだけでも、是枝裕和は、日本に帰って来て、本当に良かったと思う
彼は家庭ドラマを描く監督であるのだから、本当にいそうな日本人の細密の描写は、不可欠なわけで、自明な事なのだがなぁ

今回の是枝裕和には、タマシイが入っていたと思う

まず、日本に漂う同調圧力みたいな雰囲気を写し取っている

少し気になったのは、永山瑛太の人間像かな~ あの修羅場で飴玉を頬張るのは、おかしい、アタマが悪すぎる
あと、第一部の子供っぽい先生と、第二部の熱血的な先生とでは、視点が、違うにしても、違うだろ、あり得ないよ

しかし、田中裕子、高畑充希、中村獅童の芸達者たちは巧みで、善良そうな見た目とは違う、計算高い醜い本心を後ろ姿のオーラで出していて、この演出に痺れたよ

そして、映画館で観るたんびに、だんだん美しくなる、安藤サクラたん👩✨


そして三部目について

このパーツは、子供の目線となる

是枝裕和は、子供を描くのが、本当に巧い、世界屈指である

教室に、やたら消しゴムを強く動かす男のガキがいる 彼はチビッ子である
また、後ろの席には、長い髪の艶っぽくてやたらに冷めた美少女がいる、人生を悟ったかのような、長身の細い少女である
これらの子供たちは、確かに過去の記憶にある気がして、懐かしい、妙なキャラクターは作ってはいない

或いは、黒川想矢と柊木陽太の喧嘩である じゃれあっていて、殴りあって、また直ぐに和解をする一連の時間の流れの自然さ

拗ねていて、同時に悟ってもいる、生意気にも見える子供たちの表情


男の子供同士の、同性愛の芽生えを描いた、初めての映画であろうか


舞台装置としての廃列車も、エモーショナルである 雑然とした秘密の草むらの中に、内部は綺麗に飾られたその空間

夢があるような、救いがあるような、不思議な空間の元乗り物 それは、優しい母親の願い、お題目が通じない現実、それは、同じ黒澤明の『どですかでん』(1970)のような、色彩豊かな空間ではある その線路は草の中に消えている

世情が戦争下みたいな、非常事態になってくると、母胎から生まれる子供たちは、先天的に同性愛者の比率が飛躍的に高まるとの学説を聞いたことがある

この映画においても、火災、異常水害、異常心理と天変地異などに事欠かない、状況に、ある

普通、校内での楽器の音は、未来と希望に満ちたものと感じる

ところが、あの小学校でのラッパの音は、不協和音であり、不気味ですらある
キリスト教的には、恐怖のラッパの音にさえ感じるのでは

地球は、その前に人類は終結の方にカジが取られているのではないか

だから、子供たちが走り去るラストシーンに於いて、イギリス映画『小さな恋のメロディ』(1971)の頃のような絶対的な多幸感は、ここにはない寂しさ
北野武『菊次郎の夏』(1999)の頃のような闊達さも、ここには無い


そして、是枝裕和の復活を、寿(ことほ)ぐ



2023ー54ー44
2023ー55ー45