ボギーパパ

怪物のボギーパパのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.6
劇場2023-43 TCサクラマチ
     49 TC日比谷

人間ってぇものは、本当に「凄い」ものをみた時は、声も出ないっていうか、席を立つのを忘れるっていうか、、、そんな状態になっちまうもんなんだねぇ、、、

かなり前からティザーっぽい、中身が全くわからない予告で、是枝監督+坂元裕二脚本+坂本龍一音楽ってだけ見ても凄そうだなって確信していたものが、実際に触れてみたら案の定、抜身のヤッパか、ガラスの破片のような作品であった。いやぁこちらも血だらけになった感じ。これは明らかに是枝氏と坂元氏
のオーディエンスに対する挑戦、或いは挑発なのであろう。結論を言うととにかく素晴らしい作品!

今ニュース23で是枝監督のインタビューを見ている。カンヌのクィアパルム賞を獲った際の論評を聞き、それだけで、もうその通りとしか言いようのない作品。

ストーリーには全く触れられない。ネタバレはダメな作品。

構造的には3パートに分けられている。
①母の視点
②教師の視点
③当事者である子供たちの視点
と『羅生門』や『最後の決闘裁判』のような3層構造。またこれが良くできている!観ていくにつれて、
あゝこういったことだったのね、、、、
あゝここがこういう風に重なっていくのね、、、
あゝここの場面のこの人がこういう行動をとったのには、こんな訳があったのね、、、
といった伏線回収というか、計算し尽くされた上での重層的な構造にしてあり、我々をぐいぐいと作品が真に訴えたいところへ深淵に引っ張り込んでくる。その力が強いこと強いこと!逃れられない、、、

また、安藤サクラさんも永山瑛太さんも田中裕子さんも、東京03の角田さんも、中村獅童さんも、まぁそれぞれの味を出しまくっている。特に瑛太さんと、裕子さんは2面、3面性を要求されており、この技を観るだけでも凄いと思う。高畑充希さんも凄い!こう言う役、こう言う表現もできるんだぁ、、、短い出番でああも印象的かつ重要な舞台回しができるなんて凄い!角田さんもあのウザさ、胡散臭さはコントの一役の様でまさに本領発揮!

もちろん黒川想矢くんも柊木陽太くん、二人の場面ごとに見せる表情、仕草、台詞回しと全てが凄い!そもそも是枝監督は子供に演技指導ほとんどしないと言うけれど、二人とも生き生きと、しんどそうに生きている子供達を演じきっている!

音楽も、、、教授が提供したのは2曲だけとのこと、、、端々に入るピアノの単音のフレーズはそうなのだろうか?ベルリオーズ『幻想交響曲』の頭に似ており、不穏感の醸成には不足無い。完璧!黙祷、、、

ネタバレはダメだが、最後にこれだけは言いたい。これはやはり是枝氏と坂元氏のオーディエンスに対する挑戦というか、挑発なんだと思う。それは怒涛のラストシーンに全てが詰め込まれており、このラストを、観るものに解釈を「強要」しているというか、「簡単には言葉にさせないぞ」という強い意志の表れなのだ。

タイトルの『怪物』ってだーれだ?
それは「空気」であり「同調圧力」であり見方、見え方、捉え方、捉えられ方であろう。
「ノリ悪いなぁ」「ギャグだろ」「空気読めよ」、、、安易に使っちゃいけないね!

う〜ん、凄い作品に出会ってしまった。
間違いなく今年どころか自分の生涯ベスト級の作品になったと思う。早いところもう一度二度と劇場鑑賞が必要だ!
恐ろしい作品。


そして二度目の鑑賞
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