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怪物のりのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.3
初日に鑑賞、是枝作品としては万引き家族以来、およそ5年ぶりに観る作品ということで、公開前からとても楽しみにしていました。

監督:是枝裕和 / 脚本:坂元裕二 / 音楽:坂本龍一
という、日本映画界アベンジャーズみたいな最強布陣。
敬愛する坂本龍一の映画音楽として遺作となる本作を映画館で観ないという選択肢はありませんでした。

結論、非常に美しく素晴らしい映画でした。
題材としては学校内で起こる体罰やいじめなど、子供達を取り巻く環境を描いた作品です。
この映画の他の作品と似て非なるところは、キャラクターの感情表現の細部に至るリアリティにあると感じます。

抑えきれない衝動や感情の爆発が、スクリーンを通じてこれでもかと迫りくるわけですが、どこか当事者のような気持ちにもなり目を離せなくなるんですね。

脚本は最初に伏線を沢山散りばめて、それをどんどん回収していく形式。
伏線の回収が気持ちよく、ストーリーを全て知った上でもう一度見返したいと思いました。

坂元裕二脚本は勧められてドラマのカルテットを見た、位のニワカですが構造としては近い物を感じます。
怪物はより、社会に潜む問題に深く切り込んでいくという点で是枝さんとの相性が良かったのでしょう。

そして音楽。
坂本龍一本人が作品全体を通しての劇伴を作り切る体力はない、と監督に申し出たようで、新規の楽曲は2曲のみ。他の楽曲は既存の物を使用しています。

この描き下ろした2曲が本当に素晴らしく、怪物という作品に独特な陰を落としているわけですが、個人的はaquaを使ってくれたことが本当に良かった。

また、触れずにはいられないのが役者陣の存在。安藤サクラや永山瑛太率いるベテランもさることながら、子役の黒川想矢くん、柊木陽太くんの圧巻の演技。この二人なしでは完成しない映画と言ってもよいです。
それぞれ闇を抱える登場人物たちの掛け合いも作品を一つ上の次元へ押し上げている重要な要因です。

是枝さんは自分でも脚本を書ける方ですが、今回は他人に任せたという点で鑑賞前に少し不安な部分はありました。ただそんなものは杞憂に過ぎず、すべての要素がパズルのピースのように上手くハマった傑作だと思います。
正直、邦画実写ではシン・ゴジラ振りくらいの衝撃かなという印象。公開中にもう一度見に行きたい。良かったです。
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