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怪物のkazuoのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.8
小学生の息子が教師から虐待を受けシングルマザーである母親が学校に抗議する。しかし学校側は謝罪するも、事なかれ主義を強く感じ事実関係もはっきりさせない。また当事者の教師はとても反省している態度に見えず、シングルマザーに対する侮辱を口にする。感情が昂る母親…
この序章で多くの観客は母親に感情移入し教師に腹を立てることだろう。しかしここから物語は視点を変え以後複数の視点で進む。

視点を変えることでシーンや人物の意味や印象がガラリと変わり、物語が進む毎に見えてくる真実。これは単一的視点によるラベリングへの警鐘。そしてこのような社会的メッセージだけでなく映画的関心を持続させるストーリーはカンヌ脚本賞も納得。
また視点を変えた時の時系列を示すシーンの繋ぎ方がとても上手く矛盾がなく、観ている側はとても分かりやすく混乱することはない。
しかしだからこそラストの意味を知る事となり、そうであってほしくない感情から混乱を来す…

怪物の正体とは?
その名の通り怪物でしかなく、つまり実体などない、社会や常識が生んだ幻影。怖いのはそれに踊らされる我々人間である事を映画は示すと同時に、幸福は特定の者にだけあるのではなく、皆にあるべきものだと訴える。
傑作。
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