がんばれ集中力

怪物のがんばれ集中力のネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

"怪物"とは私にとっては誰で
誰かにとっては私かもしれない
はたまた自分の中に誰もが宿してるなにかなのか。都合の悪い事は怪物の仕業なのか。


大人になると折り合いが必要なのは分かるけど、子どもだって大人の顔色見て折り合いつけて過ごしてるんだなって切なくなった。
でも、複雑な心境の中その糸が切れた時に、人は本当に大事な事に気づかされるのではないだろうか。


坂元裕二さんの脚本は2時間でも十二分に満足できました。視点を変えては、その度に疑い、裏切られ、比喩と観客を巻き込む感情的策略の罠に気持ちよく餌食となる。

子どもから放たれる独特の(簡単には立ち入れない)生死感を撮れるのは他ならぬ是枝監督だ、と厚い信頼を寄せているので、中盤からは半端ない集中力だったとおもいます。

坂本龍一さんの音楽もスーーッと溶けるように佇んでいて、これは誰のアイデアか知りませんが不気味な音を鳴らしていたあの楽器達が音楽室であのように昇華するとは個人的に泣き所でした。美しさすら感じ…。

"湊がいつか家族を持ったらね"
"僕、よく分からないけど好きな人がいるんです。でも喜んでもらえないと分かっているから正直に言えない"
"誰でも手に入れられるものを幸せというの"

重要かはさておき「しょうもない」も多種多様な捉え方があるだろうし、最後、生まれ変わったかどうか観客に委ねたのも本当に良かった。
個人を尊重し理解の幅は多様化しつつも、噂が数秒で世界に広がっていく現代。この映画の中は極数名の私的なスモールスケールにも関わらず、心理には容赦なく訴えかけるビックスケールで、生きづらさを皮肉っていたようにも思えました。

ひとりだと色々考えちゃうから、誰かとあーだこーだと語るのが良い作品。大満足です。
がんばれ集中力

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