ウォーターライブラリー

怪物のウォーターライブラリーのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.8
二人の男の子を撮るショットは、定点とドリーで組み合わせるショットがほとんどであった。イジメを受ける子供をある種傍観的に見つめる。にもかかわらず、台風一過の清々しい草原を、障壁の取り去られた架線から境界を越えようとする二人をひたすら追いかける手持ちショットでラストは終わる。二人が内から外へ抜け出したかったのは、町を出てゆく貨物鉄道を憧れ混じりに見つめる二人のショットが挿入されていたことから明らかであろう。

つまり、最後は生まれ変われたことによる救済ではない。内から外ヘ出たに過ぎない。生まれ変わりは、片方の少年のセリフによっても否定されている。思うに、それまでカメラに肩代わりされていた、傍観者に位置づけられていた我々を、少年たちと共に駆けるPOVによって、導いているのではないか。現実に生きて我々を導いている。だからこそ、死後的救済の見解はこの映画には成立しがたい。