このレビューはネタバレを含みます
どうも私は子供が主役だったり物語の中心にいる話に弱いらしい。そして、是枝監督大好き。子役を扱わせたら日本一、いや世界でも有数の存在であろう監督が、再び少年たちを中心に置いた作品を撮る。なんと私のツボをついた作品だろうか。
結果として名作揃いの是枝監督作の中でも、最も好きな映画となりました。
様子のおかしい息子・湊(黒川想矢)を問いただす母・早織(安藤サクラ)は、湊が担任の教師から酷い扱いを受けていることを知る。校長(田中裕子)をはじめ、問題の教師・保利(永山瑛太)からの要領を得ない説明、態度に怒る早織。
食い違う主張に問題は大きくなっていき、同時に息子・湊の隠された一面も徐々に浮き彫りになっていく。
そして嵐の朝早織が起きると、湊の姿は何処にも見当たらず…。
映画は３パートに分かれ母・早織、教師・保利、息子・湊の視点で描かれます。
タイトル『怪物』には様々な意味合いが掛かっていました。誰の中にでもある怪物性、悪意がある訳じゃなく視点が違うだけで目に映る真実が変わってしまう。章が進み真相が見えてくるにつれ、ぐわんぐわん掻き乱されて｢あぁ、私も怪物じゃん｣って思わずにはいられませんでした。
他者を理解することの難しさを改めて痛感します。
母・早織パート。最初から心をざわつかせる妙な不穏感が止まりません。シングルマザーを演じる安藤サクラさん流石すぎる(というかメインの役者陣みんな凄かった…)。あの生活感ある生々しさ何なのよ、つかぜってー居るもんああいう人！ 1人息子を想う一本立ちした強い女性を見事に演じてました。
ちょっと｢アレ？｣って思うところもあったけど、ここまでは完全に私も彼女視点で観てました。
教師・保利パート。逆転する展開。若干の気色悪さ加減が見事な瑛太、相変わらずカッコいいです。田中裕子さんも素晴らしく、後半の演技とのギャップには舌を巻きました。
保利の人物性・湊の学校での行動が明らかになっていきキーパーソン、クラスメイトの星川(柊木陽太)も本格的に登場。物語は終盤へ。
息子・湊パート。素晴らしいとしか言いようがないッス。儚く切なく尊い、これ以上ない美しさ。
湊を演じる黒川クン、如何にも是枝監督好みな感じの子役。スゴいイケメン！
そして問題のクラスメイト星川演じる柊木クン。この子何なの⁉︎ チョー愛らしいんだけど！ くりっくりの目しやがってこの野郎、カワイイじゃねーかよクソがっ‼︎
監督の演出が２人のイノセンスを画面一杯に映し出していてホント幸せでございました。
最後の『怪物』、湊がどうして変わったのか、どうして２人の少年は姿を消したのか？ 遂に明らかになる終盤。ラストの美しさは筆舌し難く、ずっとあの画を観ていたいという多幸感に包まれました。
今作はふと今年見た個人的名作『CLOSE／クロース』を思い起こす場面が多く、かなり共通する部分もあったと思います。似通った名作２作が近しい時期に出てくるということがどういう意味を持つのか、それを考えるのも面白いかもしれません。
正直今作は是枝監督好きじゃなくても問答無用の名作・傑作として観られるんじゃないでしょうか。オススメ以外の言葉が出ません！ 是非、観ちゃいましょう‼︎
私は少年たちが草木が生い茂った中を走る画のある映画は傑作説を提言します‼︎
