ゆきゆき

怪物のゆきゆきのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.0
ひとつの映画としてかなり出来の良い作品だと思う。3部構造で、1つの部が終わる度に真実が明らかになっていく。

物語の描写は子供たちに寄り添ったもので好ましいと思う。子供たちは悩み苦しみながらも1歩ずつ進んでいくが、大人たちはその後ろを付いていくことしかできない。それが親であれ教師であれ、心配し分かった気になっているだけでなのです。

さて今作はクィアパルム賞受賞したが、作品におけるLGBTQ関連のことについて当事者側からは色々批判があるようです。ちょっと調べた限りの問題点。物語の構造上、LGBTQに関する部分がミステリーにおける真相部分=隠し秘められた事となっている。そしてLGBTQを取り巻く描写が現実的過ぎるが故に、当事者のトラウマを喚起されかねない。しかしその部分がネタバレの名の下に隠されてプロモーションされている、というところでしょうか。

しかしこれはこの映画の性質上仕方ない部分もある思う。インタビューを読むと、監督はLGBTQについてできる限り向き合ったという。映画を見た自分も、この問題について誠実に描いてはいるなと思った。今後映画業界はさらに一歩進めたレベルの作品が出てきて欲しい。そのための基準になるべき作品に今作はなっていると思う。またこの国におけるLGBTQの認識は、劇中で描かれる通りまだまだこのレベルであるのも事実。クィアパルム賞受賞は「日本における一般のLGBTQに対する認識ってまだまだこの程度なんだよ」という、批判的な文脈もあるのかな、と思ったりします。
ゆきゆき

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