小さじ

怪物の小さじのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

猫の死体が出ますって注意書きしてよ。
脚本賞を取ったのもわかるな〜。保利先生の彼女が言った「穿った見方」を体感できる。1人の視点からじゃ客観的な真実は見えない、誰かが嘘をついているかもしれない。

怪物は誰の心にも存在してるんじゃないかな。息子を守りたいがために物に当たったり孫を亡くしたことをネタに使う母親、潔白とはいえ執拗以上に児童を追い回したり面談の態度が最悪な担任、保身の為に旦那を売り感情を閉ざした校長、都合良く友人を突き放す息子。

私も思春期の頃はかなり荒れたから、運転中の車から飛び降りるのとか共感してしまった。担任の暴行と嘘をついたのは依里へのいじめを見抜けなかった腹いせなのかな。保利先生もいくら無実とはいえ飴食べたり変に吃ったりはよくないでしょ〜。嘘をつけない誠実な人柄だったのかもしれない。

ホルンとトロンボーンの音って放課後の学校でよく聞こえるはずなのにどこか不気味で、この先の暗い展開を予感させてくる。
中村獅童って父子セットの印象が強いのによくこの役受けたよなぁ。嵐の中でも飲んだくれて脚を滑らせて溺死、校長も罪悪感に苛まれて身投げして溺死してそう。

ラストシーンは死後の世界だと解釈した。いくら電車とはいえ土石流は流れ込みそう。死後、ようやく自由にのびのびと飛び跳ねられる。いじめや家族のしがらみに囚われず、あの秘密基地のある山で永遠に遊んで暮らす。2人にとってはそんなハッピーエンドなのかな。

ジェンダー観はそうだなぁ…。保利先生の「男らしく」といじめっ子が「女っぽい」ってよく言っていたのが引っかかっただけで、この二人が恋愛感情を持ったとは感じなかった。それよりもっと深いところの魂の結びつきというか、恋や愛じゃ表せられない絆で結ばれた2人だったと思う。
依里が少し言い寄ろうとしたのは、虐待だったりあまり愛を知らない子が優しくしてくれる人を無条件に好きになってしまうやつ…。DV彼氏ばっかり引く女の子みたいな心情だったのかと思ってしまった。湊も急に感情をぶつけられたからびっくりしちゃったんじゃないかなぁ。

坂本龍一さんの音楽を劇場で聴けて良かった。優しさと不安と両極端な感情が入り混じるピアノ。無音も音楽になる素敵な作曲家。
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