門田睦

怪物の門田睦のレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
5.0
わからなさと、普通ということの難解さ。
自分が見えてるものしか見えていないことの、自覚。
子どもの複雑性と単純性から生まれる、危うさ。
この辺がポイントなんかなと。

友達といったんですが、見終わった直後はホントに使い物にならない人になってしまった。マジごめん。っていうくらいの衝撃がありまして。
やっと言葉になってきたので、記録。

子どもと、人間の弱さ残酷さから逃げなかったのがすごい。
瑛太の存在、パートがあるっていうことがそれを物語ってる。
お母さんパートでむちゃテンポ良く謎を張り巡らせて、あと2人のパートでガンガン回収していく気持ちよさ。ただ回収中も残るなぞはあって、謎というか余白かな。
そのおかげでめちゃのめり込めて、時間を忘れてた。倍の時間でも見れたかもと思えるくらい。

美しいものの裏には犠牲があって、そこに目を向けさせてくれたおかげで、
この後どうなったんだろうっていうよりも、この映画自体への再理解をしたくなる。(ある意味でこの映画のその後を見たくなくなってるから?)
あのまま、最後の鬼綺麗な楽園に2人がずっといればいいのにって。そうあるかもなって。そこだけは嘘というか、表現だから芸術だからできる嘘。でも、なんかここまで正直さを見せられたら、最後は嘘みたいな嘘でもいいよねって思いますねぇ。
分かり合えなさっていうのをずっと描いてるはずなのに、読後感にはなぜか美しさが存在してるっていう。画はもちろん美しいんだけども、内的な葛藤がそれぞれにちょっと重なり合わせられた所に、美しさがあったのかもなとか思う。
個人的に好きなシーンは、校長先生と楽器やるとこ。校長…!!!ってなるし、想いをぶつけられる物があるっていいなって毎度のように思うし、音がね、素人なんで形容しがたいけど、なんだろうね、整ってないがそれが気持ちをかたどってる音だったというか、とにかくよかったんよ彼らの表情含めて。

画的には寄りとワークが好きでした。寄りは割と多用気味?だったけど、いやらしくないというか。ワークと相まって見たいものを見せてくれてる感。
視点別でそれぞれの瞬間を追ってくから、1つの瞬間を色んな角度から見れるという、言わばスポーツのスーパープレイのリプレイ的な体験。なんか新しかったぞ。好きだったぞ。
あ、あとにじみがめちゃ印象的なとこがあったんよね、どこだったけな。森かな、ちょっともっかいみたいな。

音は、いい意味でね、いやらしくなかった。大事なところでキメてくれる感じ。
洞窟の中のシーンと、やっぱり校長との楽器シーンは音込みで最高感。
セリフで繋がる所と、音で繋がる所と。それぞれが存在していて見やすかった。

子どもの傍から見た美しさって、危うさから生まれてるんかなとかも思ったな。
「人は見えているものしか、見えない」これを忘れないようにね、しないとね、そう思えるね、強くね。

ここから2回目を見たあとの感想。
2回目は、コミュニケーションの加害性というよりも、子どもたちが織り成す美しさってのがどこにあるかを本能的に探してた。
子どもの内的な葛藤の先に、まだ2人共に愛し合うという想いが残っていたことに美しさを感じたのかも。あれだけ綱渡り的に想いを巡らせてた2人が、それでもなお求め合えてるってう奇跡みたいな事実に心揺らいでたんかもなぁ。

パンフレットにあった、ラストシーンってほぼバージンロードやんっての共感すぎる。あんまり他人の意見簡単に受け入れちゃだめなやつだなと思ったけど、この解釈は言い当ててくれた感。
細かいとこで言うと、電車の中で「もしもし、晴れてますか〜」ってやり取りするとこ、理解してみるとさらに愛おしすぎたな。

あとやっぱり校長との楽器シーン。
あそこは何回みても何回聞いてもいい。
それぞれの章にも出てくるから、そのたんびに心震える。3章で、そのままみなとが駆け出していくのとかもう、、、。あれも音源化して欲しいぐらいです。
そして木田さんの全部わかってて静観してる感もいい。カスタネット運ぶ下りで、もう2人の雰囲気分かってるやんっていう。

1回目と2回目の間の何日間か。ずっと坂本龍一サウンドトラック聞いてたから、曲がかかるたんびにより心臓つかまれてる感。ただの手は決して乱暴ではなく、やさしく、すっとつかんでくる。
子どもたちの醸し出す美しさと相まって、あーーいいよーーってなってた。
門田睦

門田睦