なお

怪物のなおのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

もともとノーマークだったんですが、TLに流れる皆さまの高評価と、先日行われたカンヌ国際映画祭にて2部門を受賞したということで急遽鑑賞。
ミーハーだと笑ってやってください。

✏️怪物だーれだ
そういや是枝監督の作品って初めて見るな…と思いきやそんなことはなく、昨年の今くらいの時期に公開された『ベイビー・ブローカー』を見てましたわ。

それを踏まえて改めて思ったのが、是枝裕和という人は本当に「人間誰しもが直面する”正解のない情景”」を描くのが本当にお上手だなと。

前述『ベイビー・ブローカー』では、身寄りのない赤子の人身売買を生業とするブローカーが主人公。
人身売買は言うまでもなく法の道を外れた行為であるけれど、「身寄りのない赤子」と「故あって子どもを作れない夫婦」を繋ぐ架け橋にもなっていた。

「法の道」からは外れるが、見ようによっては「世のため人のため」にも見える犯罪に手を染める主人公---。
いったい世の中って何が正しくて何が間違ってるのか。
見終えた後、そんな途方もないテーマについて考えを巡らせてしまった自分がいたんですね。

本作では舞台を湖のある郊外の町に移し、主に3人の登場人物の視点から、町の小さな小学校で起きた「いじめ」を発端とする騒動、そして”正解のない情景”についてスポットを当てる。

本作の題名でもある「怪物」。
それは日常のありとあらゆる場面に存在しているし、そして己の心の中にも潜んでいるのだ。

安藤サクラ演じるシングルマザーの早織からすれば、いじめを受けている息子の身を案じてくれない小学校の校長や担任の教師が「怪物」に見えただろう。

自分も冒頭こそ早織と同じ気持ちで、早織の息子・湊を助けてくれない学校側を「怪物」だと思ったし、てっきり本作はその「怪物」たちと戦う物語だとばかり思っていた。

だがその後時間は少し巻き戻り、湊の担任教師である保利が見た光景へと場面転換する。
保利から見れば、事実は二の次で「とにかく謝れ」とする事なかれ主義な教師陣だったり、激昂する早織のことが「怪物」に見えたに違いない。

湊を始めとする子どもたちも子どもたちで、それぞれの「怪物」と戦っている。
特に湊とクラスでいじめを受けている星川君の関係性というのは様々な意味で非常に繊細で、直視するのを躊躇するほどの儚さや危うさがあった。

終盤、嵐を乗り越えた2人が道なき道を「あはは…」と笑いながら進んでいくシーン。
あの姿からはちょっとしたジュブナイル映画のような郷愁さえ感じてしまう。
全体的に陰鬱とした雰囲気である本作には一見アンマッチとも取れる「爽やかさ」を残し本作は終わる。

☑️まとめ
本作に登場する人物それぞれの視点から見た「怪物」。
あらゆる出来事において「結果」や「真実」とは常に一つであるはずだが、この「怪物」の存在の作用、つまりその人の立場や視点でその数は一つではなくなる。

脊髄反射的に怒りや悲しみを覚えるようなニュースが多い今日このごろだが、そんな事件・事故においても必ず「怪物」の存在が潜んでいる-----

そのような冷静さを持って「怪物の正体」すなわち「真実」を見極めることが重要なのかもしれない。

<作品スコア>
😂笑 い:★★★☆☆
😲驚 き:★★★★☆
🥲感 動:★★★★☆
📖物 語:★★★★☆
🏃‍♂️テンポ:★★★★★

🎬2023年鑑賞数:63(28)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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